判旨
刑法205条2項(尊属傷害致死)の規定は、憲法14条、24条2項等に違反しない。
問題の所在(論点)
旧刑法205条2項が、尊属に対する傷害致死を通常の傷害致死(同条1項)よりも重く罰していることが、憲法14条1項(法の下の平等)および24条2項(個人の尊厳と両性の本質的平等)に違反しないか。
規範
刑法205条2項が尊属に対する加害行為を重く処罰することは、憲法14条の「法の下の平等」や24条の趣旨等に反するものではなく、合憲である。
重要事実
被告人が尊属に対して傷害を加え死に至らしめたとして、刑法205条2項(尊属傷害致死罪)により起訴された事案。被告人側は、尊属に対する処罰を特別に重くしている同条項が憲法14条、24条2項等に違反すると主張して上告した。なお、本判決は昭和25年最高裁判所規則30号の委任の適否や、憲法38条3項(自白の証拠能力)についても判断を示しているが、実務上の核心は尊属規定の合憲性にある。
あてはめ
判決文では詳細な当てはめ理論は示されていないが、先行する大法廷判例(最大判昭25・10・11等)の趣旨を引用する形で判断を下している。当時の最高裁は、尊属・卑属の身分関係に基づく処罰の差別化は、孝道という道徳的要請に基づく合理的差別であると判断しており、本件においても当該判例を維持し、憲法14条、24条2項等への違反を否定した。なお、真野裁判官は、家族道徳は道徳の領域に留めるべきであり、刑罰による強制は平等原則に反するとの反対意見を留保している。
結論
刑法205条2項は憲法14条、24条2項等に違反しない。したがって、同条を適用した原判決に憲法違反はなく、上告は棄却される。
実務上の射程
本判決(昭和29年)は、後に尊属殺重罰規定を違憲とした最大判昭48・4・4より前の判例である点に注意が必要。現在の実務上、尊属殺(旧200条)は違憲とされているが、傷害致死罪等における尊属加重規定については、昭和48年判決以降に削除されている。司法試験対策としては、尊属加重規定をめぐる合憲・違憲の議論の変遷、特に昭和48年判決における「目的の正当性」と「手段の合理性(均衡)」の枠組みを理解する上での歴史的先行判決として位置付けられる。
事件番号: 昭和48(あ)1997 / 裁判年月日: 昭和49年9月26日 / 結論: 棄却
尊属傷害致死に関する刑法二〇五条二項の規定は、憲法一四条一項に違反しない。