判旨
尊属傷害致死に関する刑法205条2項の規定は、憲法14条に違反しない。判例(最大判昭25.10.11)を踏襲し、尊属に対する加重処罰の合憲性を肯定した。
問題の所在(論点)
尊属を死に至らしめた場合に、通常の傷害致死罪(旧刑法205条1項)よりも重く処罰する旧刑法205条2項(尊属傷害致死罪)の規定が、憲法14条が定める法の下の平等に反し違憲ではないか。
規範
法の下の平等を定める憲法14条の規定は、事柄の性質に応じた合理的な根拠に基づく差別を禁止するものではない。刑罰の加重において、尊属に対する敬愛や恩義という道徳的配慮に基づき、尊属殺や尊属傷害致死を重く処罰することは、合理的な根拠があるものとして合憲である。
重要事実
上告人は、尊属傷害致死罪(旧刑法205条2項)により処罰された者である。上告人は、当該規定が尊属を優遇し卑属を不当に差別するものであるとして、憲法14条違反を理由に上告を申し立てた。
あてはめ
最高裁判所は、過去の大法廷判決(昭和25年10月11日判決)を引用し、尊属に対する加重規定が憲法に違反しないことを確認した。道徳的規範を背景とする尊属への加重処罰は、立法府の合理的な裁量の範囲内にあると解される。したがって、本件における尊属傷害致死罪の適用についても、憲法に抵触する事情は認められない。
結論
旧刑法205条2項は憲法14条に違反しない。よって、上告は棄却される。
実務上の射程
本判決は、後に尊属殺重罰規定を違憲とした最大判昭48.4.4(尊属殺違憲判決)より前の判断であり、現在では本罪を含む尊属加重規定の多くが削除または違憲無効とされている点に注意が必要である。しかし、平等原則の基本論理や判例変更の歴史を理解する上では依然として重要である。
事件番号: 昭和50(あ)1283 / 裁判年月日: 昭和50年11月28日 / 結論: 棄却
尊属傷害致死に関する刑法二〇五条二項の規定は、憲法一四条一項に違反しない。