一 尊属傷害致死に関する刑法第二〇五条第二項の規定は、憲法第一三条、第一四条に違反しない。 二 憲法第二四条第二項の「その他婚姻及び家族に関する事項」中には、刑法第二〇五条第二項のごとき親族間の処罰事項に関する立法は包含されない。
一 尊属傷害致死に関する刑法第二〇五条第二項の規定は憲法第一三条第一四条に違反するか 二 憲法第二四条第二項の「その他婚姻及び家族に関する事項」と親族間の処罰事項に関する立法
憲法13条,憲法14条,憲法24条2項,刑法205条2項
判旨
尊属に対する傷害致死罪を加重処罰する刑法205条2項は、子の親に対する道徳的義務を重視し卑属の背倫理性という重き犯情を考慮したものであり、合理的な差別として憲法14条1項に違反しない。
問題の所在(論点)
尊属に対する犯罪を一般の場合に比して重く罰する規定(旧刑法205条2項)は、法の下の平等を定めた憲法14条1項、個人の尊重を定めた13条、及び家族に関する事項の個人の尊厳を定めた24条2項に違反するか。
規範
憲法14条は、国民各自の年齢、職業、特別な関係等の各事情を考慮し、道徳、正義、合目的性等の要請により、それぞれの対象の差に従い合理的に異なる取扱いを受けることまで禁止するものではない。法が子の親に対する道徳的義務を重視し、加害者たる卑属の背倫理性を重き犯情として考慮する立法趣旨は、合理的な根拠を有する。
重要事実
被告人が自己の尊属(親)に対して傷害を負わせ、その結果死亡させた事案。当時の刑法205条2項(尊属傷害致死罪)が適用されたが、弁護人は同条項が尊属と卑属を不平等に扱うものであり、憲法14条、13条、24条2項に違反すると主張して上告した。
あてはめ
刑法205条2項は、尊属を特別に利益な権利で保護せんとするものではなく、卑属の行為の背倫理性を重き犯情として考慮したものにすぎない。これは道徳的義務を重要視する正義・合目的性の要請に基づく合理的な区別であるといえる。また、憲法24条2項は婚姻や家族制度の基本原則を定めるものであり、親族間の犯罪の処罰事項までを当然に包含するものではない。したがって、同条項に反するとの主張もあたらない。
結論
刑法205条2項は憲法14条、13条、24条2項のいずれにも違反せず、合憲である。
実務上の射程
本判決は後に、尊属殺重罰規定(旧刑法200条)について『あまりに過度な差別であり合理性を欠く』として違憲と判断した最大判昭48.4.4(尊属殺重罰規定違憲判決)により、その趣旨において実質的に変更された。現在の司法試験答案上は、本判決の論理(尊属重罰の目的自体の正当性)を認めつつ、手段の合理性(法定刑の過度な重さ)で違憲とするのが標準的な論法である。
事件番号: 昭和48(あ)1997 / 裁判年月日: 昭和49年9月26日 / 結論: 棄却
尊属傷害致死に関する刑法二〇五条二項の規定は、憲法一四条一項に違反しない。