判旨
裁判所が公訴事実と異なる事実を認定する場合において、両者が日時、場所、方法等で異なっていても、基礎となる社会的事実において同一性を有し、単に法律的観察を異にするに過ぎないときは、審判の範囲を逸脱するものではない。
問題の所在(論点)
裁判所が訴因(公訴事実)と異なる事実を認定する際、どの程度の事実の相違であれば「公訴事実の同一性」の範囲内として許容され、審理の対象(審判の範囲)に含まれるか。
規範
訴因の同一性(刑事訴訟法256条3項、312条1項)の判断にあたっては、犯罪の手段や結果等の牽連事実を合一した基礎となる事実において同一性を有するか否かによって決すべきである。単に事実の一部について法律的観察(評価)を異にするに過ぎない場合は、同一性の範囲内にとどまる。
重要事実
被告人が昭和21年度産米供出特別報奨金に関し、背任の罪に問われた事案。原判決(控訴審)が認定した事実は、検察官の公訴事実および第一審判決が認定した事実と比較して、実行の日時、場所、方法等の細部において相違していた。弁護人は、これが審判の範囲を逸脱し、また判決の理由に不備があるとして上告した。
あてはめ
本件において、原判決が認定した事実は、確かに日時、場所、方法等において公訴事実と異なっている。しかし、これらは「昭和21年度産米供出特別報奨金に関する背任」という一連の基礎的な社会的事実の枠内にある。具体的には、犯罪の手段や結果等の牽連事実を総合的に観察すれば、両者は基礎において同一といえる。したがって、一部の事実について法律的観察や詳細な態様が異なるに過ぎない本件の認定は、審判の範囲を逸脱した不意打ちとはいえず、公訴事実の同一性を維持していると解される。
結論
公訴事実と認定事実に相違があっても、基礎となる事実において同一性を有する限り、審判の範囲を逸脱するものではなく、適法である。
実務上の射程
訴因変更の手続を経ずに裁判所が事実を認定できる限界(いわゆる「訴因の同一性」の範囲内での認定)を示す初期の判例である。現代の司法試験答案においては、本判決の「基本的事実関係の同一性」という視点をベースにしつつ、現在の通説的見解である「非両立性」や「重要事実の相違」を検討する際の前段階の基準(枠組み)として活用できる。
事件番号: 昭和25(れ)1838 / 裁判年月日: 昭和26年4月3日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】事実誤認および量刑不当の主張は、刑訴応急措置法13条2項(現行刑訴法405条等参照)に基づき、適法な上告理由には当たらない。 第1 事案の概要:被告人側が事実誤認および量刑不当を理由として上告を申し立てた事案。 第2 問題の所在(論点):事実誤認または量刑不当の主張が、当時の刑訴応急措置法13条2…