控訴審が事実の取調を進めるにつれ、検察官から訴因変更の申出がある場合に、訴訟記録並びに原裁判所および控訴裁判所において取り調べた証拠によつて原判決を破棄し自判しても被告人の防禦に実質的利益を害しないと認められるようなときは、訴因変更を許すべきものである。
控訴審において訴因変更が許される事例
刑訴法404条,刑訴法312条,刑訴法400条,刑訴法393条
判旨
控訴審において事実の取調べが行われ、一審判決を破棄自判しても被告人の実質的利益を害しないと認められる場合には、控訴裁判所であっても訴因変更を許すべきである。
問題の所在(論点)
事後審の性格を有する控訴審(刑事訴訟法372条以下)において、検察官による訴因変更(同法312条1項)が許容されるか。特に、被告人の防御権(実質的利益)の保護との関係が問題となる。
規範
控訴審において、訴訟記録や原裁判所および控訴裁判所における証拠調べの結果に照らし、原判決を破棄して自判したとしても被告人の実質的利益を害しないと認められる場合には、検察官による訴因変更の申出を許可することができる。
重要事実
第一審判決は業務上横領罪の成立を認めていた。控訴審において事実の取調べが進められ、第一審判決の当否が十分に検討された段階で、検察官が背任罪の予備的訴因の追加を請求した。原審(控訴審)は弁護人の意見(「別に意見なし」との回答)を聴いた上でこれを許可し、最終陳述を経て、業務上横領を背任に変更して認定した。
あてはめ
本件では、控訴審での事実取調べにより第一審判決の当否が既に十分検討されていた。また、予備的訴因の追加に際して弁護人は異議を述べず、その後に被告人・弁護人の最終陳述の機会も保障されている。このような審理経過に照らせば、控訴審で訴因を変更し、業務上横領から背任へと認定を切り替えたとしても、被告人の防御に不測の不利益を与えたとはいえず、実質的利益は損なわれていないと解される。
結論
控訴審における訴因変更は許される。本件において被告人の実質的利益を害しない形で訴因変更を許可し、背任罪を認定した原判決は正当である。
実務上の射程
控訴審の構造(事後審性)から、原則として訴因変更は否定的に解される傾向にあるが、本判例は一定の要件下でこれを肯定する。答案上は、控訴審における事実取調べ(刑訴法393条1項)が実施され、被告人の防御権に十分な配慮(意見聴取や最終陳述の確保)がなされている場合にのみ限定的に許容されるとする際の根拠として用いる。
事件番号: 昭和30(あ)1186 / 裁判年月日: 昭和32年4月9日 / 結論: 棄却
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事件番号: 昭和30(あ)3376 / 裁判年月日: 昭和33年5月20日 / 結論: 棄却
一 「被告人はA株式会社代表取締役として同会社の営業を総理しているものであるが、昭和二五年七月一四日頃同会社において被告人保管にかかる同会社資金中より甲が同人所有にかかる同会社株式一万株を被告人に譲渡する代金として金五〇万円を同会社会計課長丙をして勝手に右甲に対し支払わしめて横領した」旨の業務上横領の訴因と、「被告人は…