判旨
被告人が証人として申請した人物について尋問の機会が実際に与えられている場合には、憲法上の適正手続や証人尋問権の侵害には当たらず、実質的に単なる訴訟法違反の主張に帰する。
問題の所在(論点)
被告人が申請した証人について尋問の機会が与えられている場合に、なお「証人を尋問する機会を奪われた」とする主張が、適法な上告理由としての憲法違反(刑訴法405条1号)に該当するか。
規範
憲法37条2項前段は、刑事被告人に対し、すべての証人を審問する機会を保障している。もっとも、裁判所が申請された証人の尋問を許可し、実際にその尋問の機会が与えられたのであれば、当該憲法上の保障は充足されており、これに反する主張は憲法違反の体をなしていても、実質的には単なる訴訟法違反(刑訴法405条の不適法な上告理由)にすぎない。
重要事実
被告人4名の弁護人は、第一審または原審において証人を申請した。これに対し、原審では申請された4名の証人すべてについて尋問が許され、実際に尋問の機会が与えられていた。しかし、弁護側はこれを憲法違反であるとして上告を申し立てた。
あてはめ
本件において、被告人側が申請した4名の証人は、原審において悉く採用され、尋問の機会が与えられている。したがって、憲法37条2項の証人審問権が侵害された事実は認められない。弁護人が主張する違憲の主張は、実質的には単なる訴訟法違反(証拠調べの手続等に関する不満)に帰するものであり、刑訴法405条が規定する上告理由には当たらない。
結論
本件上告は刑訴法405条の上告理由に該当しないため、棄却されるべきである。
実務上の射程
証人尋問権(憲法37条2項)の侵害を主張する際の限界を示す。申請が却下された場合ではなく、採用・実施されたにもかかわらず手続の細部を捉えて違憲を主張しても、それは単なる訴訟法違反(あるいは事実誤認)として処理され、上告理由としての「違憲」には当たらないとする実務的な線引きとして機能する。
事件番号: 昭和27(あ)4267 / 裁判年月日: 昭和28年12月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の面前での証人尋問に際し、被告人が退廷させられた場合であっても、反対尋問の機会が実質的に保障されている限り、憲法37条2項に違反しない。 第1 事案の概要:被告人が刑事事件で起訴され、第一審の公判手続において証人尋問が行われた。その際、何らかの理由(詳細は判決文からは不明)により被告人が退廷…