判旨
控訴審において新たに証人尋問を行わず、第一審の公判調書に記載された証言を証拠として採用することは、憲法31条や刑事訴訟法に違反しない。
問題の所在(論点)
控訴審において新たに証人尋問を行うことなく、第一審の公判調書に記載された供述を証拠として採用する手続が、憲法31条の適正手続の保障や伝聞例外等の証拠法に照らして許容されるか。
規範
控訴審において証人申請を却下した上で、第一審公判調書中の当該証人の供述記載を証拠として採用したとしても、刑事訴訟の適正な手続(憲法31条)や証拠法上の諸原則に抵触するものではない。
重要事実
被告人の弁護人は、控訴審において証人申請を行ったが却下された。その一方で、裁判所は第一審の公判調書に含まれる当該証人の供述記載を証拠として採用し、有罪判決の基礎とした。これに対し弁護人は、このような手続は憲法31条(適正手続の保障)および刑事訴訟法に違反するものであると主張して上告した。
あてはめ
判決文によれば、裁判所は昭和25年3月15日の大法廷判決を引用し、控訴審が独自の判断で証人申請を却下しつつ、第一審ですでに現出している証拠(公判調書)を再評価することは、刑事訴訟応急措置法12条(現行法下の証拠法則においても同様の趣旨)に違反しないとしている。これにより、被告人に防御の機会が与えられた第一審の証拠を控訴審が利用することは、憲法上の適正手続に反しないと評価される。
結論
控訴審による証人申請の却下および第一審公判調書の証拠採用は適法であり、憲法31条に違反しない。
実務上の射程
控訴審が続審的性格を有していた当時の判例であるが、現行の事後審的構造においても、第一審の証拠を基礎に事実誤認の有無を判断する控訴審の枠組みを正当化する法理として、手続の適憲性を主張する際の補強材料となり得る。
事件番号: 昭和29(あ)2808 / 裁判年月日: 昭和29年12月3日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】第一審において証人として尋問済みの者について、控訴審が重ねて尋問する必要がないと認めて証人採用の請求を却下することは、憲法37条2項に違反しない。 第1 事案の概要:被告人側は、控訴審において特定の人物(A)を証人として申請したが、原審(控訴審)はこの申請を却下した。当該人物は既に第一審において証…