被告人が弁護人を選任しその届出をなしたに拘わらず、原審がその後指定した公判期日を弁護人に通知せず、従つて弁護人不出頭のまま審理を終結し、判決宣告期日に有罪判決を言渡したときは弁護権の不法な制限であつて、判決に影響を及ぼすべき法令の違反があり、且つ原判決を破棄しなければ著しく正義に反する。
弁護権不法制限の例
旧刑訴法410条11号,旧刑訴法320条2項,旧刑訴法320条3項,新刑訴法411条,刑訴施行法3条の2
判旨
選任届出済みの弁護人に対し公判期日の通知を怠り、弁護人不出頭のまま審理を終結して判決を言い渡すことは、弁護権の不法な制限であり、判決に影響を及ぼすべき法令違反に該当する。
問題の所在(論点)
弁護人の選任届出がなされている場合に、裁判所が弁護人への期日通知を怠り、弁護人不在のまま審理・判決を行うことは、刑事訴訟法上の「判決に影響を及ぼすべき法令の違反」(刑訴法411条1号等)に該当するか。
規範
被告人が適法に弁護人を選任して届け出ている場合、裁判所は当該弁護人に対して公判期日を通知し、弁護権を実質的に保障する義務を負う。この通知を欠いたまま審理を進めることは、被告人の守るべき弁護権を不法に制限するものであり、刑事訴訟法上の適正手続に反する重大な法令違反となる。
重要事実
被告人は弁護人を選任し、その旨の届出を適法に行っていた。しかし、原審(控訴審)は、弁護人の選任届出がなされているにもかかわらず、その後に指定した公判期日を当該弁護人に通知しなかった。その結果、弁護人が不出頭のまま審理が終結され、判決宣告期日に被告人に対して有罪判決が言い渡された。
事件番号: 昭和26(れ)1524 / 裁判年月日: 昭和26年11月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】本判決は、弁護人が主張する事由は単なる事実誤認の主張であって、刑事訴訟法405条の上告理由に該当しないと判断した。また、職権による破棄を定めた同法411条を適用すべき事由も認められないとして、上告を棄却した。 第1 事案の概要:上告人(被告人)側が、原判決(第2審)の認定事実について不服を申し立て…
あてはめ
本件では、被告人が弁護人を選任し届け出ていた以上、裁判所は当然に期日通知を行うべきであった。しかるに原審はこれを怠り、弁護人が防御の機会を全く与えられないまま審理を終結させている。これは被告人の防御権の核心である弁護権を著しく侵害する「不法な制限」である。このような手続的瑕疵は、判決の正当性を根本から揺るがすものであり、原判決を破棄しなければ著しく正義に反すると評価される。
結論
本件手続には弁護権の不法な制限があり、判決に影響を及ぼすべき法令の違反がある。したがって、原判決は破棄を免れない。
実務上の射程
弁護権保障の重要性を強調する基本判例である。公判手続の適法性を争う問題において、期日通知の欠如といった手続的違法が、直ちに「判決に影響を及ぼすべき法令の違反」や「著しい正義に反する事由」となり得ることを論証する際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和29(あ)3165 / 裁判年月日: 昭和30年3月17日 / 結論: 棄却
必要弁護事件につき、弁護人の選任がないまま、第一回公判期日を開いても、ただ人定質問をしたにとどまる場合には、弁護権の行使を不法に制限したことにはならない。