必要弁護事件につき、弁護人の選任がないまま、第一回公判期日を開いても、ただ人定質問をしたにとどまる場合には、弁護権の行使を不法に制限したことにはならない。
弁護権の行使を不法に制限したことにはならない一事例―必要弁護事件につき、弁護人の選任がないまま開廷し、人定質問を行つた場合
刑訴法289条,憲法37条3項
判旨
不法に弁護権の行使を制限したと認められる特段の事情がない限り、憲法37条3項の保障する弁護人依頼権への違反は認められない。
問題の所在(論点)
刑事訴訟において弁護権の行使が制限されたとされる状況が、憲法37条3項にいう弁護人依頼権の侵害に該当するか。
規範
被告人が弁護人依頼権を行使するにあたり、国家機関等が不法にその行使を制限したと認められる証跡がない限り、憲法37条3項への違反は認められない。
重要事実
被告人4名に対し、原審が下した判断において憲法31条および37条3項違反が主張された事案。弁護側は、弁護権の行使が制限されたとして上告したが、具体的な不法制限の事実は判決文からは不明である。
あてはめ
事件番号: 昭和30(あ)556 / 裁判年月日: 昭和30年6月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の自白を補強すべき証拠が存在する場合には、憲法38条3項及び刑訴法319条2項にいう自白の補強法則に反せず、有罪判決を維持することができる。 第1 事案の概要:被告人Aの自白に基づき有罪判決が下された事案において、弁護人は第一審判決が挙示した証拠の中に自白を補強すべき証拠が存在しないと主張し…
本件においては、記録上、弁護権の行使を不法に制限したと認めるべき証跡は存在しない。したがって、弁護人依頼権を侵害しているとの前提を欠いていると解される。
結論
憲法37条3項に違反する事実は認められず、上告は棄却される。
実務上の射程
弁護人依頼権の侵害を主張するにあたっては、単なる形式的な不利益ではなく、具体的・不法な制限の存在を立証する必要があることを示唆している。司法試験においては、接見交通権の制限や弁護人抜きでの手続進行が「不法な制限」に当たるかの判断基準として参照し得る。
事件番号: 昭和27(あ)5553 / 裁判年月日: 昭和28年7月23日 / 結論: 棄却
供述調書の任意性は、裁判所が適当と認める方法で調査すれば足りるものである。
事件番号: 昭和26(れ)2078 / 裁判年月日: 昭和27年1月31日 / 結論: 破棄差戻
被告人が弁護人を選任しその届出をなしたに拘わらず、原審がその後指定した公判期日を弁護人に通知せず、従つて弁護人不出頭のまま審理を終結し、判決宣告期日に有罪判決を言渡したときは弁護権の不法な制限であつて、判決に影響を及ぼすべき法令の違反があり、且つ原判決を破棄しなければ著しく正義に反する。
事件番号: 昭和27(れ)9 / 裁判年月日: 昭和27年4月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】共犯者の供述を他の共犯者の自白の補強証拠とすることは、憲法38条3項の規定に違反しない。 第1 事案の概要:被告人および相被告人らが共同して犯罪に及んだとされる事案において、原審は被告人の自白に加えて、相被告人の供述などの各証拠を総合して犯罪事実を認定した。これに対し被告人側は、相被告人の供述を補…