判旨
食糧管理法に基づく米の供出割当てが生産量を超過し、あるいは不公正に行われたという事実が認められない以上、当該割当ての強制が憲法25条や13条に違反することはない。
問題の所在(論点)
食糧管理法に基づき生産量を超過するような米の供出を強制することが、憲法25条(生存権)に違反するか。また、不公正な割当てが憲法13条(個人の尊重)に違反するか。
規範
憲法25条(生存権)および憲法13条(個人の尊重・幸福追求権)の違反を問うためには、具体的処分が当該権利を侵害する客観的事実が存在することを要する。特に食糧配給等の公共の福祉に関わる行政処分において、その前提となる事実(割当量の妥当性や公平性)が認められない場合には、違憲の主張は成立しない。
重要事実
被告人は、昭和22年度における米の供出割当てについて、自己の生産量を超過する不当なものであり、かつ不公正な割当て(村八分の私刑に等しいもの)であると主張した。その上で、このような不当な供出を強権的に強制することは、憲法25条および13条に違反するものであるとして上告した。
あてはめ
まず、憲法25条違反の主張について検討するに、被告人は供出割当量が生産量を超過すると主張するが、原審においてそのような事実は認められていない。次に、憲法13条違反の主張について検討するに、記録上も被告人の供出割当てが不公正である、あるいは村八分の私刑を執行したといった事情は認められない。したがって、違憲の前提となる事実関係を欠いている。
結論
被告人の主張する事実は認められず、本件供出割当ておよびその強制が憲法25条および13条に違反するという主張には理由がない。上告棄却。
実務上の射程
生存権や幸福追求権を根拠に行政処分の違憲性を争う場合でも、まずは処分の基礎となる事実認定(過剰な負担の有無や平等の逸脱等)が重要であることを示す。具体的な権利侵害の事実がない以上、憲法違反の問題は生じないという、司法審査の前提となる事実認定の重要性を確認する判例である。
事件番号: 昭和26(あ)162 / 裁判年月日: 昭和27年10月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法25条1項は、国家が国民一般に対して概括的に健康で文化的な最低限度の生活を営ませるべき国政上の任務を定めたものであり、個々の国民に対して直接に具体的・現実的な権利を付与したものではない。 第1 事案の概要:被告人が刑事事件における上告審において、原判決が憲法25条(生存権)および憲法31条に違…