判旨
憲法25条は、すべての国民が健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有することを規定するが、これに基づき直ちに特定の法律の規定を憲法違反と断ずることはできず、個別の法律(食糧管理法等)の解釈において独自の立場を前提とする主張は認められない。
問題の所在(論点)
食糧管理法による食糧の売買等の制限が、憲法25条の規定に違反し、同条に基づく独自の解釈によって同法の適用が否定されるべきか。
規範
憲法25条の規定は、国に対して国民の生活を保障すべき政治的な義務を課したものであり、個別の法律の合憲性や解釈を検討するにあたっては、その法律の目的や公益上の必要性に鑑みた合理的な制限が認められる。具体的な法律の規定を度外視して、同条を根拠に独自の解釈を導くことは許されない。
重要事実
被告人が食糧管理法3条(当時の規定)に違反する行為を行ったとして起訴された事案において、被告人側は、同条による食糧の統制が憲法25条の保障する生存権を侵害するものであると主張し、上告した。
あてはめ
判決文によれば、所論の憲法25条違反の主張は、食糧管理法3条を独自の立場で解釈するものであり、当裁判所の差し戻し判決において既に示された見解に照らして妥当ではない。憲法25条を根拠とした独自の解釈は前提を欠くものであり、食糧管理法の規定そのものを否定するに足りる憲法上の具体的根拠は示されていない。
結論
本件上告は棄却される。食糧管理法3条の制限は憲法25条に照らしても違憲とはいえず、独自の解釈による違憲主張は認められない。
実務上の射程
憲法25条(生存権)のプログラム規定説的な性格を示唆し、具体的な法律の解釈において生存権を直接の根拠として法律の効力を否定することに対し、慎重な態度を維持する実務運用を裏付けるものである。答案上は生存権の法的性格や、法律の合憲性判定の文脈で使用される。
事件番号: 昭和27(あ)5442 / 裁判年月日: 昭和28年6月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】食糧管理法による食糧の統制は、国民の生存権を保障する憲法25条に違反するものではなく、公共の福祉に適合する合理的な規制である。 第1 事案の概要:被告人が食糧管理法の規定に違反して食糧の取引等を行ったとして起訴された事案において、被告人側は同法による食糧統制が憲法25条に違反し、生存権を侵害するも…