判旨
没収を言い渡す判決において、没収物件が刑法19条の法定要件に該当することやその所有関係を証拠によって認めた理由を逐一説示する必要はない。また、判決文から没収物件が被告人以外の者に属しないと容易に窺い知れるのであれば、その旨の明示的な説明がなくても適法である。
問題の所在(論点)
没収を言い渡す判決において、没収物件が法定の没収要件(刑法19条)に該当すること、およびその所有関係(被告人以外の者に属しないこと等)について、証拠に基づき認定した理由を判決書に具体的に説示する必要があるか。
規範
没収の言い渡しにあたっては、没収物件が刑法19条の法定要件に該当すること、およびその所有関係について、証拠により認めた理由を具体的に説示することまでは要しない。ただし、刑法19条2項に基づき、物件が被告人以外の者に属しないことを前提とする場合、その旨が判決全体から合理的に読み取れる必要がある。
重要事実
被告人らの刑事事件において、原審は没収の言い渡しを行う際、適用法条(刑法19条)を示すのみにとどめた。没収物件が具体的に被告人らの所有に属するのか、あるいは第三者の所有に属しないのかについて、判決文中に明示的な事実認定や証拠の理由が付されていなかった。これに対し、弁護側は所有関係等の認定理由が欠如しており訴訟法に違反するとして上告した。
あてはめ
本件において原判決は、没収の言い渡しに際して単に適用法条を示したのみであり、物件の所有関係について直接的な説明は欠いていた。しかし、判決文全体を精査すれば、当該物件が被告人ら以外の者に属しないと認定していることは容易に窺い知ることができる。したがって、証拠による具体的な理由説示がなくても、没収の要件判断を誤った法令違反があるとはいえない。また、第三者の所有物であることが記録上明らかな特段の事情も認められない。
結論
没収物件の所有関係等の理由説示は必須ではなく、判旨からその判断内容が合理的に読み取れる以上、原判決に法令違反はなく、上告は棄却される。
実務上の射程
裁判所が没収を行う際の判決書の記載程度(理由の省略可能性)を示したものである。被告人以外の者に属しないことが判文上明らかであれば足りるとするが、第三者の権利を侵害する恐れがある(物件が第三者に属する疑いがある)場合には、より慎重な認定が必要となる点に注意すべきである。
事件番号: 昭和25(れ)1867 / 裁判年月日: 昭和26年3月9日 / 結論: 棄却
窃盗犯人が被告人であることの証拠は被告人の自白だけであつても、被害者の始末書に窃盗被害の日時及び被害物件等について被告人の自白にかかる事実を裏書するに足りる記載がある以上、右自白と始末書の記載を綜合して被告人に窃盗の罪を認めても違憲違法ではない。