判旨
共謀共同正犯の判示において、実行行為の分担や共謀の日時・場所等を詳細に認定せずとも、被告人らが共謀の上で犯罪を実行したことが具体的に認定されていれば、共同正犯の判示として欠けるところはない。また、被告人から供述者の尋問請求がない限り、供述録取書類を証拠とできるとする規定は憲法37条2項に反しない。
問題の所在(論点)
1. 共同正犯の成立を認定するにあたり、共謀の日時・場所や実行行為の分担を詳細に特定する必要があるか。 2. 被告人が証人喚問の請求をしなかった場合において、供述調書を証拠として採用することは憲法37条2項の証人尋問権を侵害するか。
規範
1. 共同正犯(刑法60条)の認定について、具体的犯行の共謀が認められる以上、実行行為の分担や共謀の日時・場所等を微細にわたって認定・説示しなくても、罪刑法定主義や訴訟法上の要請に反するものではない。 2. 証拠能力について、刑事訴訟応急措置法12条(現行刑訴法326条に類する規定)に基づき、被告人が供述者の尋問を請求しない限り、書面を証拠とすることは憲法37条2項に違反しない。
重要事実
被告人は、他の者と共謀の上、強盗罪を実行したとして起訴された。原判決(二審)は、被告人らが共謀の上で判示強盗罪を実行した事実を具体的に認定したが、共謀の具体的な日時、場所、および各人の実行行為の細かな分担については詳細な説示を欠いていた。また、一審の第1回公判(被告人が不在であった回)における相被告人Aの供述を記載した調書を事実認定の資料とした。被告人側は、これらが理由不備や証人尋問権(憲法37条2項)侵害にあたるとして上告した。
あてはめ
1. 共同正犯の認定について:原判決は被告人らが共謀の上で強盗を実行したという核心的事実を具体的に認定している。共謀の構成要件的要素が示されている以上、日時の分担などの仔細を認定せずとも強盗罪共同正犯の判示として十分である。 2. 証拠能力について:記録上、被告人側から証人Aの喚問申請がなされた事実は認められない。法は被告人が尋問を請求しない限り書面の証拠能力を認めており、被告人が権利を行使しなかった以上、当該調書を事実認定の資料としても違法ではない。
結論
1. 共謀共同正犯の認定において、共謀の事実が具体的に認められるならば、日時・場所・分担の詳細な説示は不要である。 2. 尋問請求がなされない限り、供述録取書類の証拠採用は合憲であり、原判決に違法はない。
実務上の射程
実務上、共謀共同正犯の判示において「何月何日頃、何処において、誰々と共謀し」という一定の特定は求められるが、本判決は、犯罪事実の同一性を害さない範囲であれば、その詳細(分担の態様等)の説示を省略しても理由不備にはならないことを示している。また、伝聞例外における同意や尋問権放棄の法理を補強する材料として利用できる。
事件番号: 昭和23(れ)1677 / 裁判年月日: 昭和24年2月17日 / 結論: 棄却
一 裁判を公開したことを特に調書に明記する必要のないこと及び公判調書に公開を禁じた旨の記載のない限り公判は公開して行われたものと認むべきものであることは當裁判所の判例(昭和二二年(れ)第二一九號同二三年六月十四日大法廷判決及び同年(れ)第一〇七號同年六月二日大法廷判決)とするところである。 二 共犯者は被告人本人でない…
事件番号: 昭和24(れ)369 / 裁判年月日: 昭和24年5月24日 / 結論: 棄却
しかし、強盜犯人と意思連絡のもとに見張等をした者は、右共犯者の行爲を利用して自己の犯意を實現したものであつて、共同正犯にほかならぬこと、當第三小廷にもその判例がある。(昭和二三年(れ)第三五一號、同年七月二〇日判決)