判旨
不当に長い抑留・拘禁の後の自白は証拠能力を否定されるが、警察への引致から約3週間ないし5週間後の自白は直ちに不当に長い抑留・拘禁後の自白には当たらない。
問題の所在(論点)
警察による引致から約3週間から1ヶ月以上経過した後に作成された供述調書が、憲法第38条第2項にいう「不当に長く抑留又は拘禁された後の自白」に該当し、証拠能力を否定されるか。
規範
日本国憲法第38条第2項および刑事訴訟法第319条第1項に基づき、不当に長く抑留または拘禁された後の自白は、任意性に疑いがあるものとして証拠とすることができない。ただし、身体拘束の期間のみならず、自白が任意になされたことを疑わせる具体的な事跡の有無を総合的に考慮して判断すべきである。
重要事実
被告人は昭和21年9月3日に警察に引致された。その後、同年9月26日に第1回聴取書が、同年10月11日に第2回聴取書がそれぞれ作成された。弁護人は、これらが不当に長く抑留拘禁された後の自白であり、証拠能力を欠くと主張して上告した。
あてはめ
本件において、被告人が警察に引致されたのは9月3日であり、第1回聴取書の作成まで約23日間、第2回まで約38日間が経過している。しかし、この程度の期間をもって直ちに「不当に長く抑留拘禁された」と断定することはできない。また、記録上、右自白が任意になされたものではないことを疑わせるような事跡(虚偽の自白を強いるような過酷な取り調べ等)は存しないと認められる。したがって、本件自白の任意性は否定されない。
結論
本件聴取書は不当に長い抑留拘禁後の自白には当たらず、証拠能力を有する。よって、これらを証拠として引用した原判決に憲法違反の違法はない。
実務上の射程
事件番号: 昭和26(あ)88 / 裁判年月日: 昭和27年2月14日 / 結論: 棄却
記録によると、被告人Aは昭和二四年九月二〇日恐喝未遂事件(原判決判示第一の(一)の事実)の嫌疑により勾留状の執行を受け、名古屋拘置所代用監獄起町警察署に勾留されたのであるが、本件が複雑で関係者多数のため取調困難という理由で同年一〇月九日まで勾留期間が延期され、その期間終了の前日である同月八日右恐喝未遂事件で起訴せられた…
自白の任意性(抑留・拘禁による不当な心理的圧迫)が問題となる場面での考慮要素となる。特に拘束期間の長さについては、単なる日数の経過だけでなく、取調べの態様や供述に至る経緯などの具体的状況とあわせて判断する実務運用を補強する判例である。
事件番号: 昭和26(あ)3372 / 裁判年月日: 昭和27年5月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人および弁護人が証拠調請求に対して異議なく同意し、かつ強制による供述であると疑うに足りる資料がない場合、供述調書の証拠能力は認められ、憲法38条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人および弁護人は、司法警察員および検察事務官が作成した供述調書の証拠調請求に対し、異議なくこれに同意したことが第…
事件番号: 昭和23(れ)833 / 裁判年月日: 昭和24年5月18日 / 結論: 棄却
しかし、憲法第三七條第二項に、刑事被告人はすべての證人に對し審問の機會を充分に與えられると規定しているのは、裁判所の職權により又は訴訟當事者の請求により喚問した證人につき、反對訊問の機會を充分に與えなければならないと言うのであつて、被告人に反對訊問の機會を與えない證人其他の者(被告人を除く)の供述を録取した書類は絶對に…