判旨
保釈出所から1か月以上経過した後になされた自白は、憲法38条2項にいう「不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白」には当たらない。
問題の所在(論点)
身体拘束を受けていた被告人が保釈出所した後、相当期間を経てからなされた自白が、憲法38条2項の「不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白」として証拠能力を否定されるべきか。
規範
憲法38条2項が禁じる「不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白」に該当するか否かは、自白がなされた時点における身体拘束の状態や、拘束解除からの経過期間を考慮して判断すべきである。既に身体拘束から解放され、十分な期間が経過している場合、過去の拘禁による心理的圧迫が自白に不当な影響を及ぼしているとは認められない。
重要事実
被告人は、第一審において昭和24年10月24日に保釈出所した。その後、被告人が第一審の公判廷において自白を行ったのは、保釈出所の日から1か月以上が経過した後のことであった。
あてはめ
本件において、被告人は自白を行う1か月以上前に保釈によって身体拘束を解かれている。自白がなされたのは第一審の公判廷であり、長期間の拘禁による心理的・肉体的影響が自白を誘発するような状況にはなかったといえる。したがって、当該自白は不当な拘禁の結果得られたものとは解されない。
結論
本件自白は憲法38条2項にいう不当な拘禁後の自白には当たらず、証拠能力を有する。したがって、本件上告は棄却される。
実務上の射程
自白の証拠能力(憲法38条2項、刑訴法319条1項)に関する判断において、「不当に長い拘禁」と「自白」との間の因果関係を否定する際の重要判例。保釈等により拘束が解かれた後に十分な冷却期間がある場合、身体拘束の不当性を問うまでもなく自白の任意性が肯定されやすいことを示している。
事件番号: 昭和26(あ)88 / 裁判年月日: 昭和27年2月14日 / 結論: 棄却
記録によると、被告人Aは昭和二四年九月二〇日恐喝未遂事件(原判決判示第一の(一)の事実)の嫌疑により勾留状の執行を受け、名古屋拘置所代用監獄起町警察署に勾留されたのであるが、本件が複雑で関係者多数のため取調困難という理由で同年一〇月九日まで勾留期間が延期され、その期間終了の前日である同月八日右恐喝未遂事件で起訴せられた…
事件番号: 昭和29(あ)270 / 裁判年月日: 昭和30年12月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不当に長い拘禁後の自白(憲法38条2項、刑訴法319条1項)に該当するか否かは、勾留延長の手続の適法性や、自白強要の形跡、証拠同意の有無等の諸事情を総合して判断すべきである。 第1 事案の概要:被告人Aは、昭和27年2月1日に逮捕、同月4日に勾留され、同月22日まで勾留延長された後、同日に起訴され…
事件番号: 昭和25(あ)3136 / 裁判年月日: 昭和26年6月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不当に長く拘禁された後の自白(刑訴法319条1項)に該当するか否かは、記録上の具体的な拘禁状況を精査して判断すべきであり、弁護人が主張する事由が認められない場合には、証拠能力を否定することはできない。 第1 事案の概要:被告人および弁護人は、第一審判決が不当に長く拘禁された後の自白を証拠として採用…