判旨
不当に長い拘禁後の自白として証拠能力を否定するためには、その前提となる不当な抑留または拘禁の事実が資料によって認められなければならない。
問題の所在(論点)
不当に長い拘禁後の自白(刑訴法319条1項)に該当するか否かの判断において、前提となる拘禁事実の立証がどの程度必要か。
規範
憲法38条2項および刑事訴訟法319条1項は、不当に長く抑留または拘禁された後の自白を証拠とすることができない旨を規定しているが、同規定を適用するためには、客観的な資料に基づき、不当な抑留または拘禁がなされたという事実が認められることを要する。
重要事実
被告人側は、昭和25年10月26日に勾禁された事実を前提として、その後の自白が不当に長く抑留または拘禁された後のものであると主張して上告した。
あてはめ
本件記録を精査しても、被告人が主張する日付に勾禁されたことを認めるべき資料が存在しない。したがって、主張の前提となる不当な抑留・拘禁の事実自体が認められない以上、当該自白が不当な拘禁後のものであるとの評価を導くことはできない。
結論
被告人の主張はその前提を欠き、刑事訴訟法405条の上告理由に当たらないため、上告を棄却する。
実務上の射程
自白の証拠能力(任意性)を争う際、不当な拘禁を理由とする場合には、まずその拘禁の始期や態様に関する具体的な客観的資料を提示する必要があることを示唆している。実務上は、勾留状や接見記録等の訴訟記録との整合性が重要となる。
事件番号: 昭和25(あ)3136 / 裁判年月日: 昭和26年6月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不当に長く拘禁された後の自白(刑訴法319条1項)に該当するか否かは、記録上の具体的な拘禁状況を精査して判断すべきであり、弁護人が主張する事由が認められない場合には、証拠能力を否定することはできない。 第1 事案の概要:被告人および弁護人は、第一審判決が不当に長く拘禁された後の自白を証拠として採用…
事件番号: 昭和26(あ)88 / 裁判年月日: 昭和27年2月14日 / 結論: 棄却
記録によると、被告人Aは昭和二四年九月二〇日恐喝未遂事件(原判決判示第一の(一)の事実)の嫌疑により勾留状の執行を受け、名古屋拘置所代用監獄起町警察署に勾留されたのであるが、本件が複雑で関係者多数のため取調困難という理由で同年一〇月九日まで勾留期間が延期され、その期間終了の前日である同月八日右恐喝未遂事件で起訴せられた…