判旨
不当な抑留または拘禁後の自白であっても、釈放から相当期間が経過した後の公判廷における供述については、拘禁と自白との間に因果関係が認められない限り、証拠能力を否定すべき理由はない。
問題の所在(論点)
不当な拘禁が疑われる状況下でなされた自白が、保釈から約20日経過した後の公判廷における供述である場合に、刑訴法319条1項(任意性のない自白)に抵触し証拠能力を失うか。
規範
不当な拘禁があった場合でも、その後の自白の証拠能力については、当該拘禁と自白との間の因果関係の有無によって決せられる。特に、身体拘束が解かれた後に十分な期間が経過している場合には、心理的影響が遮断されているものとして因果関係は否定される。
重要事実
被告人は身体拘束を受けていたが、保釈によって出所した。その後、約20日が経過した時点で第一審の公判廷に出頭し、犯罪事実を認める供述(自白)を行った。弁護人は、この自白が不当な拘禁の影響下にあるとして証拠能力を争い、上告した。
あてはめ
本件において、被告人の自白は保釈出所から約20日という、外部との接触や心理的安定を得るに足りる相当な期間が経過した後になされている。この事実からすれば、かつての拘禁状態による心理的圧迫が公判廷での供述に直接の影響を及ぼしているとはいえず、自白と拘禁との間の因果関係は断絶していると評価できる。
結論
被告人の公判廷における自白と拘束との間に因果関係は存しないため、当該自白の証拠能力は認められる。
実務上の射程
自白の任意性(刑訴法319条1項)が争われる事案において、先行する違法・不当な身体拘束がある場合の「因果関係の遮断」を判断する際の指標となる。公判廷供述の任意性を肯定する事情として、保釈後の期間経過(本件では20日)が重要な考慮要素となる。
事件番号: 昭和23(れ)1097 / 裁判年月日: 昭和23年11月30日 / 結論: 棄却
右の如く勾留は二ケ月に足らぬものであり、しかも保釋後一〇ケ月を經て不拘束の状態においてなされた自白であるから、かかる自白は法にいう不當に長い抑留後の自白に該當しないものと見るを相當とする。