判旨
不当に長い拘禁後の自白(刑訴法319条1項)に該当するか否かは、逮捕からの経過期間のみならず、事案の複雑性や関係者の多さ等の特殊性を総合して判断すべきである。
問題の所在(論点)
刑事訴訟法319条1項、憲法38条2項にいう「不当に長く抑留又は拘禁された後の自白」の意義、および逮捕後21日ないし41日を経過した後の自白がこれに該当するか。
規範
「不当に長く抑留又は拘禁された後の自白」にあたるか否かは、単に逮捕後の経過日数のみで形式的に判断するのではなく、事案の内容の複雑性、関係者の多人数性といった捜査上の特殊な事情を考慮し、個別具体的に判断すべきである。
重要事実
被告人が逮捕されてから21日目に行った第1回目の検察官供述、および逮捕から41日目に行った第2回目の検察官供述について、弁護人が不当に長い拘禁後の自白であるとしてその証拠能力を争った。事案の詳細は判決文からは不明であるが、事案は複雑で関係者が多数存在する事件であった。
あてはめ
本件において、被告人の自白は逮捕後21日および41日という長期間を経た後のものである。しかし、本件は事案の内容が複雑であり、かつ関係者が多数にのぼるという特殊事情が存在する。このような捜査上の困難が認められる状況下では、上記期間の経過をもって直ちに「不当に長い拘禁」による自白と評価することはできない。
結論
本件自白は「不当に長く抑留又は拘禁された後の自白」とは認められず、証拠能力を有する。
実務上の射程
自白の任意性(刑訴法319条1項)のうち、拘禁期間の長さを争う際の限界を示す判例である。勾留期間が法定の限度内であるか、またはそれに近い期間であっても、事案の複雑性等の合理的な理由があれば、期間の長さのみをもって不当な拘禁とはされない。答案上は、供述までの日数という「量」の側面だけでなく、事案の性質という「質」の側面から拘禁の正当性を論じる必要がある。
事件番号: 昭和26(れ)2486 / 裁判年月日: 昭和29年1月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不当な勾留中になされた自白の証拠能力 第1 事案の概要:被告人Aは、勾留中に自白を行ったが、弁護人は当該勾留自体が不当なものであると主張し、その期間中になされた供述は違憲な手続に基づくものであって証拠能力を欠くと訴えた。具体的な勾留期間や不当性の詳細な内容は、本判決文からは不明である。 第2 問題…