農地委員会(後に農業委員会、以下同じ)書記兼事務局長として、同委員会の議案の作成、農地の買収売渡に関し現地の実測調査および関係人の資金信用状態を調査しこれを同委員会に復命する等、同委員会会長の職務に附随する一切の事務に従事する者が、甲から、既に国に買収され乙に売渡となつた農地を買戻し再度取得できるよう便宜な取計ありたい旨の請託を受け、その報酬として金員を収受したときは、収賄罪が成立する。
収賄罪が成立する事例。
刑法197条
判旨
「不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白」に当たるかは、拘束期間の長短だけでなく、事件の性質や複雑性等の諸般の事情を考慮して具体的に判断すべきである。また、別件勾留中の取調べも、初めからその事件の取調べに利用する不当な目的等がなければ、直ちに自白を強制したものとはいえない。
問題の所在(論点)
1. 憲法38条2項・刑訴法319条1項の「不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白」の判断基準。 2. 別件勾留中の取調べによって得られた自白の任意性と、その不当性の有無。 3. 収賄罪における「職務」の範囲(準職務行為の可否)。
規範
1. 憲法38条2項、刑訴法319条1項にいう「不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白」か否かは、単に拘束期間の長短によって抽象的に判断されるべきではない。犯罪の個数・種類・性質、共犯者等の関係人の数、事件の繁簡、取調べの難易等、諸般の事情を考慮して具体的に決すべきである。 2. 別件で起訴勾留中の被告人を他の事件の被疑者として取り調べたとしても、初めから当該事件の取調べに利用する目的・意図で、ことさらに別件を起訴し、不当に勾留を請求したと認められない限り、直ちに自白を強制したものとはいえない。 3. 賄賂罪における「職務」には、公務員の職務執行行為のみならず、これと密接な関係のある行為、すなわち「準職務行為」や「事実上所管する職務行為」も含まれる。
重要事実
被告人Aは農地委員会書記兼事務局長の職にあった。被告人らは、多数の犯罪事実(農地の買戻し等に関する便宜供与の請託と報酬受領)に関与し、犯行から相当期間が経過した後に発覚した。被告人らは逮捕・勾留後、相当日数を経た後に自白し、また別件の起訴勾留中にも本件に関する取調べを受けていた。弁護人は、これらが不当に長い拘禁後の自白であり、また職務権限を欠くため収賄罪は成立しないと主張して上告した。
あてはめ
1. 本件は犯行後かなりの年月を経て発覚し、犯罪数や関係者が多く、事案の性質上取調べが容易ではなかった。このような複雑な事件では、所定の日数を経た後の自白であっても直ちに「不当に長い拘禁後」とはいえない。 2. 本件取調について、検察官に別件を利用する不当な目的や意図は認められず、自白の任意性に疑いを差し挟むべき事情も存在しないため、不当な強制はないといえる。 3. 被告人Aが請託を受けた農地の買戻しへの便宜供与は、本来の職務そのものでなくとも、農地委員会事務局長としての職務と密接な関係のある行為(事実上所管する行為)に当たるため、職務関係が認められる。
結論
本件各自白は不当に長い拘禁後のものとはいえず、任意性も否定されない。また、便宜供与は収賄罪の「職務」に該当するため、有罪とした原判決は正当である。
実務上の射程
自白の任意性(319条1項)が争点となる事案で、拘束期間が長期化している場合の反論(事件の複雑性等)として機能する。また、収賄罪の「職務」の範囲を「密接関係性」により広範に認める法理は、現代の汚職事件等でも実務上の確立した基準として用いられる。
事件番号: 昭和26(あ)4119 / 裁判年月日: 昭和29年1月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不当に長い拘禁後の自白(刑訴法319条1項)に該当するか否かは、逮捕からの経過期間のみならず、事案の複雑性や関係者の多さ等の特殊性を総合して判断すべきである。 第1 事案の概要:被告人が逮捕されてから21日目に行った第1回目の検察官供述、および逮捕から41日目に行った第2回目の検察官供述について、…