判旨
別件の勾留期間中に本件の捜査が行われたとしても、当該勾留が事案の複雑性等の合理的な理由に基づき適法に継続されている限り、その期間中の供述調書が不法拘禁によるものとして証拠能力を否定されることはない。
問題の所在(論点)
別件(背任罪)での勾留期間の延長が適法になされた場合において、その拘禁中に作成された本件(収賄罪)に関する供述調書は、不法拘禁下での作成として証拠能力を否定されるか。また、別件勾留から本件勾留への切り替え手続の適法性が問われた。
規範
身柄拘束下で作成された供述調書の証拠能力が否定されるためには、その前提となる拘禁が令状に基づかない不法なものであることを要する。別件による勾留であっても、事案の複雑性や関係人の多数性など取調べに日時を要する合理的な理由があり、法定の手続に従って延長・更新されている場合には、その拘束は適法であり、憲法31条、34条に違反しない。
重要事実
被告人は昭和28年3月11日に背任の嫌疑で勾留された。事案が複雑で関係人が多数であり、取調べに時間を要することを理由として、同月27日まで、さらに同月30日まで勾留期間が延長された。この間、同月26日に背任の罪がないと断定された事実はなかった。同月30日、本件収賄罪について一部起訴が行われ、同日付で勾引状が執行され、翌31日に勾留状が発付された。弁護人は、背任罪での拘禁が不法であり、その期間中に作成された調書には証拠能力がないと主張して上告した。
あてはめ
記録によれば、被告人の背任罪による勾留およびその延長は、「事案複雑、関係人多数にして取調に日時を要するため」という合理的な理由に基づき適法になされていた。被告人が主張する「3月26日時点で背任の罪なしと断定された」という事実は認められず、3月28日、29日時点でも適法な勾留期間内であった。また、本件収賄罪についても起訴に伴う勾引・勾留手続が合式に行われている。したがって、本件の調書作成の前提となる身柄拘束に違法はなく、不法拘禁を前提とする違憲・違法の主張は妥当しない。
結論
被告人に対する勾留手続は適法であり、不法拘禁中の作成であることを理由に調書の証拠能力を否定することはできない。上告棄却。
実務上の射程
別件逮捕・勾留の限界が問題となる事案において、別件自体に実体的な嫌疑と捜査の必要性(事案の複雑性等)が認められる限り、その拘束中の取調べ結果の証拠能力は維持されるという判断枠組みを示している。答案上は、令状主義の潜脱や不当な取調べの有無を検討する際の前提として、身柄拘束自体の適法性を判断する指標となる。
事件番号: 昭和24(れ)979 / 裁判年月日: 昭和24年10月1日 / 結論: 棄却
論旨は被告人の檢察官に對する供述は不當に長く拘禁された後の自白であるから證據とすることができないものであると主張するけれども被告人の勾留は昭和二二年一〇月三日であつて檢察官の第一回聽取書は同月九日、第二回聽取書は同月一一日に作成されたものであるから右聽取書における被告人の自白が不當に長く拘禁された後の自白でないことは明…