判旨
被告人および弁護人が証拠調請求に対して異議なく同意し、かつ強制による供述であると疑うに足りる資料がない場合、供述調書の証拠能力は認められ、憲法38条に違反しない。
問題の所在(論点)
被告人および弁護人が証拠調に同意した供述調書について、任意性に疑いがない場合に、その証拠能力を認めることは憲法38条(自己負罪拒否特権・自白排除法則)に違反するか。
規範
刑事訴訟法326条1項の同意がある証拠については、原則として証拠能力が認められる。ただし、その前提として供述の任意性が担保されている必要があり、記録上、強制による供述であると疑わしめるに足る資料が存しない場合には、憲法38条等の不利益な供述の強要禁止に抵触することはない。
重要事実
被告人および弁護人は、司法警察員および検察事務官が作成した供述調書の証拠調請求に対し、異議なくこれに同意したことが第一審公判調書から明らかであった。一方で、弁護人は上告審において、当該供述が強制によるものであるとして憲法38条違反を主張した。
あてはめ
本件では、第一審の公判調書の記載によれば、被告人側が証拠とすることに明確に同意している。また、記録を精査しても、右供述が拷問や脅迫等の強制によって得られたものであると疑わせる客観的な資料や事情は見当たらない。したがって、任意性が否定されるべき事由はなく、同意に基づく証拠採用の手続きは適法である。
結論
被告人側の同意があり、かつ任意性に疑いがない以上、当該供述調書を証拠とすることは憲法38条に違反せず、証拠能力が認められる。
実務上の射程
伝聞例外(刑訴法326条)の同意があった場合でも、任意性が否定される自白については証拠能力が認められない(319条1項)という原則を前提としつつ、記録上特段の事情がない限り、同意がある以上は憲法違反の問題は生じないことを示している。答案上は、同意の効力と任意性の関係を整理する際の基礎として用いる。
事件番号: 昭和26(あ)952 / 裁判年月日: 昭和28年1月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の自白がある場合、相被告人の供述を当該被告人の自白に対する補強証拠とすることができる。これは憲法38条3項の趣旨に反するものではない。 第1 事案の概要:被告人の自白が存在する刑事事件において、原判決が相被告人の供述を被告人の自白に対する補強証拠として採用し、有罪判決を下した。これに対し弁護…
事件番号: 昭和26(れ)450 / 裁判年月日: 昭和26年6月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の公判廷における供述が犯罪事実を認めるものでない場合、それは「自白」には当たらない。また、自白以外の証拠も併せて事実認定に用いられているのであれば、憲法38条3項(自白のみによる有罪判決の禁止)の違反は認められない。 第1 事案の概要:被告人が刑事事件において有罪判決を受けた際、原審は第一審…
事件番号: 昭和26(れ)832 / 裁判年月日: 昭和29年4月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法38条3項にいう「本人の自白」とは、公判廷外における自白を指し、当該審級の公判廷における被告人の自白はこれに含まれない。したがって、公判廷における自白のみに基づいて有罪判決を言い渡しても、同項には違反しない。 第1 事案の概要:被告人AおよびBは、犯罪事実について第一審から争っていたが、控訴審…
事件番号: 昭和26(れ)854 / 裁判年月日: 昭和26年9月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の自白以外に、適法な証拠調べを経た押収品等の物証が存在する場合には、憲法38条3項の「自白が被告人に不利益な唯一の証拠である場合」には当たらず、有罪判決を言い渡すことができる。 第1 事案の概要:被告人が脇差や日本刀等の所持により起訴された事案において、原審の公判調書には「押収品は全部これを…
事件番号: 昭和26(れ)588 / 裁判年月日: 昭和26年7月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】警察段階での自白が拷問によるものと疑われる場合であっても、それが証拠として引用されておらず、かつ他に拷問を裏付ける資料がない場合には、憲法38条違反の問題は生じない。また、原審で証人喚問の申請がなされていない以上、証人尋問の機会を奪ったとする違憲の主張は成立しない。 第1 事案の概要:被告人Aは警…