判旨
強盗の共謀が認められる場合には、教唆(刑法61条1項)ではなく共同正犯(同法60条)が成立する。また、幇助行為の着手後に犯行を中止したと主張する場合でも、客観的な中止の事実が認められない限り、幇助罪の成立を免れない。
問題の所在(論点)
1.強盗の共謀が認められる場合に、教唆(61条1項)ではなく共同正犯(60条)を適用することは正当か。2.幇助行為を直前に中止したとの主張がある場合、どのような場合にその責任を免れるか。
規範
特定の犯罪(強盗)を行うことの合意(共謀)が認められる場合、その実行行為を自ら分担したか否かを問わず、刑法60条の共同正犯が成立する。また、幇助行為については、実行行為の直前に中止したと主張しても、客観的事実として中止が認められない場合には、幇助犯としての責任を否定することはできない。
重要事実
被告人Aは、他の者と強盗を共謀したとして起訴された。Aの弁護人は、Aの行為は強盗の教唆にすぎないと主張した。また、被告人Bは、強盗犯行の直前に幇助行為を中止したと主張し、幇助犯の成立を争った。原審は、Aについては強盗共謀の事実を認め、Bについては中止の事実を認めずに、それぞれ有罪とした。これに対し、被告人らが上告したものである。
あてはめ
1.被告人Aについては、証拠に基づき強盗の共謀事実が認められる。共謀が成立している以上、刑法60条の共同正犯として処断すべきであり、教唆規定を適用すべきとの弁護人の主張は失当である。2.被告人Bについては、記録上、強盗犯行の直前に幇助行為を中止した事実は認められず、原判決もそのような認定をしていない。したがって、中止を前提とする事実誤認の主張は採用できない。
結論
被告人Aに共同正犯を適用した原判決は正当である。被告人Bの中止の主張は事実の基礎を欠き、本件各上告を棄却する。
実務上の射程
共謀共同正犯の成立要件(共謀の事実)が認められれば、教唆との区別において共同正犯が優先されることを示す。また、幇助の中止を主張する際には、単なる主観的な意図ではなく、客観的な事実による証明が必要であることを示唆している。答案上は、共謀が認められる事実関係がある場合に、安易に教唆に流れるのではなく、正犯性を肯定する根拠として活用できる。
事件番号: 昭和26(あ)2020 / 裁判年月日: 昭和26年9月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】窃盗罪において、教唆犯と共同正犯は区別されるべき概念であり、原判決が教唆の事実を確定している場合には、共同正犯の成否を問わずに教唆犯としての責任を認めることができる。 第1 事案の概要:被告人は窃盗教唆の罪で起訴され、第一審判決および原判決(控訴審)において窃盗教唆の事実が認定された。これに対し弁…