判旨
窃盗罪において、教唆犯と共同正犯は区別されるべき概念であり、原判決が教唆の事実を確定している場合には、共同正犯の成否を問わずに教唆犯としての責任を認めることができる。
問題の所在(論点)
事実認定において「窃盗教唆」が認められている場合に、共同正犯に関する判例との抵触を理由として上告することができるか。換言すれば、教唆犯の成立と共同正犯の成否の関係が問題となる。
規範
特定の犯罪事実について、教唆の事実が認められる場合には刑法61条1項に基づき教唆犯が成立する。共同正犯(刑法60条)の成否は、実行行為への関与態様に基づき別途判断されるべきものであり、教唆の事実が確定されている以上、共同正犯に関する判例違反の主張は前提を欠く。
重要事実
被告人は窃盗教唆の罪で起訴され、第一審判決および原判決(控訴審)において窃盗教唆の事実が認定された。これに対し弁護人は、本件が共同正犯に関する高等裁判所の判例に違反するものであると主張して上告した。
あてはめ
原判決は第一審判決が認めた「窃盗教唆」の事実をそのまま確定しており、被告人を「共同正犯」として処断したものではない。したがって、共同正犯の成立要件に関する議論やそれに関する判例との抵触を主張することは、原判決が依拠していない前提に基づくものであり、不当である。
結論
被告人に窃盗教唆罪の成立を認めた原判決は正当であり、共同正犯に関する判例違反を理由とする上告は棄却される。
実務上の射程
共犯の区別(教唆と共同正犯)に関する初歩的な判断を示すものである。実務上は、認定された犯罪事実が教唆にとどまるのか、あるいは正犯意思や重要な役割を伴う共同正犯に至るのかの区別を明確にすべきことを示唆している。
事件番号: 昭和27(あ)5972 / 裁判年月日: 昭和28年3月5日 / 結論: 棄却
牛を盗む方法を教え、盗んだ牛を自分の小屋に入れるよう指示して再三牛を盗んでくるように勧説した者は、被害者が具体的に特定されていなかつたところで、それに基いて正犯が牛を盗んで来たときは、窃盗教唆としての責任を免れない。