被告人が適法な召喚を受けながら医師A作成の、出頭必ずしも不可能とはなつていない診断書を提出して出頭しなかつたときは、正当の事由なくして出頭しなかつた場合に該当する。
出頭必ずしも不可能となつていない診断書の提出と旧刑訴第四〇四条の適用
旧刑訴法404条,刑訴規則183条,刑訴規則184条1項,刑訴規則施行規則3条
判旨
被告人が適法な召喚を受けながら、出頭が不可能とはいえない内容の診断書を提出して公判期日に出頭しない場合、正当な理由のない不出頭にあたる。この場合、裁判所は被告人の陳述を聴かずに判決を宣告することができ、訴訟手続上の違法は認められない。
問題の所在(論点)
被告人が診断書を提出して公判を欠席した場合において、当該不出頭が「正当な理由」のないものとして、被告人の陳述を聴かずに判決をすることが許されるか。
規範
被告人が適法な召喚を受け、かつ出頭が不可能であると客観的に認められない場合には、正当な理由なく出頭しなかったものとみなされる。このような状況下では、裁判所は被告人の陳述を聴くことなく、判決を言い渡すことができる(旧刑事訴訟法404条参照)。
重要事実
被告人は、原審の第5回公判期日に際し、適法な召喚を受けていた。被告人は医師作成の診断書を提出して欠席したが、その診断書の内容によれば、被告人の出頭は必ずしも不可能とはされていなかった。また、被告人は前回の公判期日にも不出頭であったという事情が存在した。原審はこれらを考慮し、被告人の陳述を聴かずに判決を言い渡した。
あてはめ
本件では、被告人は召喚という法的義務を負いながら、提出された診断書においてすら「出頭が不可能」である旨の確実な証明がなされていなかった。このような状況に加え、前回期日の不出頭という経緯を併せれば、被告人の不出頭は正当な理由に基づくものとは評価できない。したがって、被告人の権利保護(陳述権)の必要性は減退しており、裁判所がそのまま判決手続を進めたことは適法である。
結論
被告人の不出頭には正当な理由がなく、原審が陳述を聴かずに判決をしたことに訴訟手続上の違法はない。上告棄却。
実務上の射程
刑事訴訟において被告人の出頭が判決の要件となる場合でも、診断書の形式的な提出のみで不当な審理遅延を図ることは許されないことを示している。診断書の内容から出頭の可否を実質的に判断すべきという実務上の指針となる。
事件番号: 昭和25(あ)2886 / 裁判年月日: 昭和26年7月17日 / 結論: 棄却
一 なおストリキニーネを混入した鮒の味噌煮が苦味を呈しているからといつて何人もこれを食べることは絶対にないと断定し難いところであるから、殺人罪の不能犯であるとの主張は容認することはできない。 二 しかるに本件第一審公判において被告人及び弁護人は検察官の取調請求にかかる被告人の司法警察員に対する供述調書及び被告人の検察官…