最終口頭弁論期日の変更決定の告知が期日後に被告人に送達され、従つて同期日の召喚が不適法であつても、被告人が公判準備期日において控訴理由を詳細に供述し、犯罪事実については争わず、単に量刑の軽減を求める趣旨を述べており、また、被告人の弁護人は右公判準備期日に立ち会い被告人のため証人の尋問を申請したばかりでなくその証人の尋問に立ち会い尋問をし、なお最終口頭弁論期日に出頭して被告人の権利保護のため有利な弁論をしている場合には、同期日に被告人が出頭していなくても刑訴第四一一条にあたらない。
刑訴第四一一条にあたらない事例
刑訴法411条1号,旧刑訴法404条,旧刑訴法407条,旧刑訴法320条2項
判旨
被告人の出頭を欠く不適法な期日指定に基づく審理であっても、被告人が量刑のみを争い弁護人が十分な活動を尽くしている等の事情があれば、原判決を破棄しなければ著しく正義に反するとまでは認められない。
問題の所在(論点)
被告人が出頭せず、かつ召喚手続に不備(期日後の送達)があった状態でなされた審理判決について、刑訴法411条を適用して破棄すべき「著しく正義に反するもの」に当たるか。
規範
刑事訴訟法411条を適用し、不適法な審理を理由として原判決を破棄すべきか否かは、被告人の訴訟上の権利が実質的に保障されていたか、及び当該手続の違憲・違法を是正しなければ著しく正義に反する状況にあるか否かによって判断する。
重要事実
被告人は控訴審において、当初は診断書を提出して期日変更を得ていたが、公判準備期日に住居で尋問を受け次回期日の告知を受けた後は、診断書の提出も出頭もしなくなった。最終口頭弁論期日の変更決定の告知は期日後に送達されており、召喚手続としては不適法であった。しかし、被告人は準備期日で犯罪事実を認め量刑の軽減のみを求めており、弁護人は証人尋問や最終弁論において被告人の権利保護のため有利な活動を行っていた。
あてはめ
本件では、被告人は公判準備期日で控訴理由を詳細に供述し、事実関係を争わず量刑不当のみを主張していた。また、複数の弁護人が全期日に立ち会い、証人尋問や有利な弁論を行うなど、被告人の防衛権は実質的に行使されている。召喚手続に不備はあるものの、被告人自らが出頭を回避していた側面も否定できない。これらの事情を総合すると、被告人の防御に実質的な不利益が生じたとはいえず、原判決を維持しても正義に反するとはいえない。
結論
被告人不出頭のまま審理した点に手続上の瑕疵はあるが、実質的な防御権の行使が担保されていた以上、原判決を破棄すべき著しい正義に反する事由には当たらないため、上告を棄却する。
実務上の射程
刑事訴訟法411条の「著しく正義に反すると認めるとき」の判断において、手続的違法がある場合でも、被告人の実質的な不利益の有無や弁護人の活動状況を考慮する実務上の枠組みを示すものである。手続の適正よりも実質的な妥当性を優先する職権破棄事由の限定的解釈として活用できる。
事件番号: 昭和26(れ)356 / 裁判年月日: 昭和26年9月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】本判決は、弁護人の上告趣意が刑事訴訟法405条の上告理由に該当せず、かつ記録を精査しても同法411条を適用して判決を破棄すべき顕著な事由も認められないとして、上告を棄却したものである。 第1 事案の概要:本件において被告人側(弁護人)は、原判決に対する上告を申し立てた。上告趣意として何らかの主張が…