一 在廷證人の訊問申請は新期日の指定、裁判所外の訊問證人の召喚等別段の手續を必要としないで直ちにその場で行われる訊問を求める趣旨のものであるから、かかる申請があつたにかかわらず裁判所なその申請を許容することなく當日の審理を終え新期日を指定告知した場合には暗默にその請求を却下する決定をしたものと見るを相當とする。 二 自首の有無並びに自首に基き刑の減輕を爲すか否かの判定は事實審たる原裁判所の自由裁量に屬する事柄であつて、自首をした旨の主張は刑訴第三六〇條第二項にいわゆる法律上刑を減免する原由の主張に當らない。 三 示談、改悛その他所論の事項は罪となるべき事實、若しくは法律上刑を減免する原因たる事實に當らないから、判決にこれが判斷を示さなかつたからと言つて所論のように理由を附さない違法ありとはいえない。
一 在廷證人の訊問申請と默示の却下決定 二 自首の主張と刑訴第三六〇條第二項 三 示談、改悛等の事實についての判斷明示の要否
刑訴法344條,刑訴法360條2項,刑訴法360條,刑法42條
判旨
在廷証人の訊問申請に対し、裁判所が許容することなく当日の審理を終えて新期日を指定・告知した場合は、黙示に却下決定があったものと解される。また、自首や示談等の事情は法律上の刑の減免事由の主張に当たらず、判決理由においてこれらへの判断を示す必要はない。
問題の所在(論点)
1. 裁判所が在廷証人の訊問申請に対し、明示の却下決定をせずに閉廷した場合の訴訟手続の適否(黙示の却下決定の成否)。 2. 自首や示談の有無、犯行時の泥酔等が「法律上刑を減免する原由となるべき事実」の主張に当たり、判決理由での判断が必須となるか。
規範
1. 在廷証人の訊問申請は、召喚等の手続を経ず直ちにその場での訊問を求めるものである。裁判所がこれを許容せず当日の審理を終了し、新期日を指定告知したときは、暗黙に当該申請を却下する決定をしたものと解するのが相当である。 2. 刑訴法335条2項(旧360条2項)にいう「法律上刑を減免する原由となるべき事実」とは、必要的減免事由を指し、自首(刑法42条1項)や示談、改悛の情等はこれに含まれない。したがって、これらについて特段の判断を示さなくても理由不備の違法とはならない。
重要事実
被告人の弁護人が、原審の公判廷において在廷していた証人Aの訊問を申請した。裁判所は、他の証人の喚問については採用を告げたものの、Aについては特に却下の決定を言い渡さないまま、当日の審理を終えて次回期日を指定・告知した。その後の公判でも弁護人はAの訊問請求を重ねて行うことはなく弁論が終結した。また、被告人側は上告審において、原審が自首や泥酔(心神喪失・耗弱)、示談の事実について判決理由で判断を示さなかったことを理由不備として主張した。
あてはめ
1. 証人Aの申請について、裁判長は合議の上で他の証人の喚問のみを告げ、当日の公判を終了して次回期日を指定した。在廷証人申請はその場での即時訊問を求める性質のものであるから、この一連の手続により、裁判所はAの訊問を許容しない意思を明確にしており、黙示の却下決定があったといえる。さらに、その後の公判で弁護人が異議を留めず弁論を終結させている点からも、手続上の違法はない。 2. 自首の成否やそれによる減軽の有無は事実審の自由裁量に属し、必要的減免事由ではない。また、泥酔についても心神喪失等の抗弁として主張された形跡がなく、示談等も単なる情状に関する事項に過ぎない。これらは「法律上刑を減免する原由」に当たらないため、特段の判断を要しない。
結論
1. 在廷証人の訊問申請に対し、明示の決定がなくとも新期日の指定等により黙示の却下があったと認められ、手続は適法である。 2. 自首、示談、改悛等は判決理由で必ずしも判断を示す必要はなく、理由不備の違法はない。
実務上の射程
在廷証人に関する判示は、証拠調べ請求に対する裁判所の応答義務(刑訴法43条等)に関連し、黙示の決定が許容される場面を画定する。刑罰減免事由については、刑訴法335条2項の「法律上刑を減免する原由」が必要的減免事由に限定されることを確認する実務上極めて重要な先例である。
事件番号: 昭和27(あ)772 / 裁判年月日: 昭和28年7月14日 / 結論: 棄却
刑訴二〇三条に基く司法警察員の被疑者に対する弁解録取書は、専ら被疑者を留置する必要あるか否かを調査するための弁解を録取する書面であつて、同一九八条の被疑者の取調調書ではないから、刑訴法上その弁解の機会を与えるには犯罪事実の要旨を告げれば充分であつて、同一九八条二項に従いあらかじめ被疑者に供述を拒むことができる旨を告げる…