刑訴二〇三条に基く司法警察員の被疑者に対する弁解録取書は、専ら被疑者を留置する必要あるか否かを調査するための弁解を録取する書面であつて、同一九八条の被疑者の取調調書ではないから、刑訴法上その弁解の機会を与えるには犯罪事実の要旨を告げれば充分であつて、同一九八条二項に従いあらかじめ被疑者に供述を拒むことができる旨を告げることを要するものでなく、従つてその旨の記載がないからといつて刑訴法に違反するところはない。
被疑者の弁解録取書の作成にあたり、いわゆる黙祕権の告知が必要か。−刑訴法二〇三条に基く弁解録取書と同法一九八条に基く取調調書との関係
刑訴法203条,刑訴法198条
判旨
刑事訴訟法203条に基づく弁解録取書については、198条2項の規定が適用されないため、あらかじめ黙秘権を告知せずに作成されたものであっても証拠能力は否定されない。
問題の所在(論点)
刑訴法203条に基づく弁解録取に際し、同法198条2項が定める供述拒否権の告知は必要か。告知を欠く弁解録取書に証拠能力が認められるか。
規範
刑訴法203条に基づく弁解録取は、専ら被疑者を留置する必要性の有無を調査するための手続であり、同法198条の被疑者取調とは性質を異にする。したがって、弁解の機会を与えるに際しては犯罪事実の要旨を告げれば足り、同法198条2項に従いあらかじめ供述拒否権を告知することを要しない。なお、当該書面が刑訴法322条の要件を具備し、または同法326条の同意があるときは、証拠とすることができる。
重要事実
被告人は殺人未遂の容疑で逮捕された。司法警察員は、刑訴法203条に基づき被告人から弁解を録取し、弁解録取書を作成した。この際、司法警察員は被告人に対し、あらかじめ供述拒否権(黙秘権)を告知していなかった。第一審および原審はこの弁解録取書を証拠として採用し、被告人に殺意(少なくとも未必の故意)があったと認定して有罪判決を下した。被告人側は、黙秘権告知のない弁解録取書を証拠としたことは違法であるとして上告した。
あてはめ
本件における書面は、刑訴法203条に基づいて作成された弁解録取書である。同条の手続は留置の必要性を判断するためのものであり、取調を定めた198条とは別個の手続である。規範に照らせば、黙秘権告知の記載がないからといって直ちに同法に違反するものではない。また、当該弁解録取書が証拠法上の要件(322条の任意性等、または326条の同意)を満たしている以上、これを証拠として採用した原判決に違法はない。
結論
弁解録取時の黙秘権告知は不要であり、告知がないことをもって証拠能力は否定されない。したがって、当該書面を証拠として有罪とした判断は正当である。
実務上の射程
弁解録取書と取調調書の区別を明確にする判例である。答案上は、伝聞例外(322条1項)の検討に際し、作成手続の適法性が争点となった場合に、本判例を引用して告知不要説を論じる。ただし、実務上は現在、弁解録取に際しても黙秘権告知が行われることが通例であり、本判例の射程はあくまで「告知を欠くことのみをもって直ちに証拠能力が否定されるわけではない」という点に留まることに留意が必要である。
事件番号: 昭和23(れ)323 / 裁判年月日: 昭和23年6月24日 / 結論: 棄却
一 在廷證人の訊問申請は新期日の指定、裁判所外の訊問證人の召喚等別段の手續を必要としないで直ちにその場で行われる訊問を求める趣旨のものであるから、かかる申請があつたにかかわらず裁判所なその申請を許容することなく當日の審理を終え新期日を指定告知した場合には暗默にその請求を却下する決定をしたものと見るを相當とする。 二 自…