辯護人が公判期日前に證人の訊問を申請したのに對し、裁判所が採否を決定しないで結審したのは違法である。
辯護人が公判期日前にした證人訊問の申請に對する決定の要否
刑訴法324條3項4項,刑訴法344條1項,刑訴法410條14號
判旨
証拠調べの請求に対し、裁判所が採否の決定をしないまま結審し判決を言い渡すことは、刑事訴訟法上の決定義務に違反し、判決に影響を及ぼすべき適法な手続に違背する。また、結審手続や最終陳述をもって、直ちに証拠請求が放棄されたり却下の決定がなされたと解することは許されない。
問題の所在(論点)
弁護人が申請した証拠調べの請求に対し、裁判所が明確な採否の決定を行わないまま結審・判決した場合、その手続は適法か。また、結審手続をもって証拠請求の放棄や却下決定があったとみなすことができるか。
規範
裁判所は、弁護人等からなされた証拠調べの請求を却下する場合には、必ず決定をなさなければならない(旧刑事訴訟法344条1項参照)。証拠請求の採否を未決定のまま放置して結審し、判決を言い渡すことは手続上の違法を構成し、上告理由となる(旧同法410条14号参照)。
重要事実
殺人被告事件の控訴審において、弁護人は自首減軽を主張し、その立証のために巡査Bの証人尋問を申請した。しかし、原審は他の証人2名については採否の決定をして取り調べたものの、Bについては採否の決定を与えないまま結審し、自首減軽の判断も示さずに判決を言い渡した。原審の記録には、結審時に事実・証拠の取調終了が告げられ、被告人が最終陳述を行った旨の記載があった。
あてはめ
刑事訴訟法上、証拠請求を却下するには決定を要する。本件では、原審がBの証人尋問請求に対し何ら決定をなさなかったことは明らかな法条違反である。裁判長が「取調を終える」と告げ、被告人が「寛大な処分を仰ぐ」と述べたとしても、それのみをもって弁護人が当初の証拠請求を放棄したと解したり、裁判所が却下決定を済ませたと解することは軽々に許されない。
結論
原審の手続には、証拠請求に対する決定義務に違反した違法があるため、原判決を破棄し、本件を福岡高等裁判所に差し戻す。
実務上の射程
実務上、証拠の採否が不明確なまま手続が進むことを防ぐ防波堤となる判例である。答案上は、裁判所の証拠決定義務を論じる際や、手続違背を理由とした上告・控訴理由を構成する際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和26(れ)360 / 裁判年月日: 昭和26年6月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】本判決は、刑事訴訟法405条の上告理由に該当せず、かつ同法411条の職権破棄事由も認められない場合には、上告を棄却すべきであることを示したものである。 第1 事案の概要:被告人が原判決に対して上告を申し立てたが、弁護人が主張した上告趣意の内容が、刑事訴訟法405条の定める憲法違反や判例違反等の適法…