被告人が昭和二六年二月一二日の原審第一回公判期日及び同年三月九日の第二回公判期日に適法な召喚手続を受けるながら、右各公判期日前にいずれも刑訴規則第一八三条の方式に適合しない医師某作成の病名胃潰瘍一日休養を要する旨の診断書を提出したのみで、他に不出頭の事由を疏明する資料を提出せず、右各期日を懈怠した場合は、旧刑訴第四〇四条にいわゆる正当の事由がない場合にあたる。
旧刑訴第四〇四条にいわゆる正当の事由のない事例
旧刑訴法404条,刑訴施行法2条,刑訴規則施行規則3条,刑訴規則183条,刑訴規則148条
判旨
控訴審において被告人が適法な召喚を受けながら、方式に適合しない診断書を提出して出頭しない場合、正当な理由のない欠席として被告人の陳述を聴かずに判決をすることができる。
問題の所在(論点)
控訴審において、医師の診断書を提出して欠席した被告人に対し、その陳述を聴かずに判決をすることが許されるか。具体的には、形式不備のある診断書の提出が「正当の事由」による不出頭と認められるかが問題となる。
規範
控訴審において被告人が適法な召喚を受けながら公判期日に出頭しない場合、その不出頭について「正当の事由」があるか否かは、提出された資料が刑訴規則の定める方式(現行規則183条等)に適合し、受理可能なものであるかによって判断される。適式な疎明資料がない限り、裁判所は不出頭につき正当な事由があるとは認めず、被告人の陳述を聴かずに判決をすることができる(旧刑訴法404条、現行394条参照)。
重要事実
被告人は控訴審の第1回および第2回公判期日に際し、適法な召喚を受けた。しかし、被告人は「胃潰瘍で1か月の休養を要する」旨の医師作成の診断書を添付した期日延期願を提出したのみで、両期日とも出頭しなかった。原審は、当該診断書が刑訴規則所定の方式に適合せず受理できないものであるとして、正当な事由のない不出頭と判断し、被告人の陳述を聴かずに即日結審して判決を宣告した。
あてはめ
本件において被告人が提出した診断書は、刑訴規則183条(現行規則も同様の趣旨)に定める方式に適合していない。そのため、同規則184条によりこれを受理することはできず、被告人の主張する疾病の事実や不出頭の正当性は客観的に疎明されたとはいえない。したがって、被告人は適法な召喚を受けながら「正当の事由」なく再度の公判期日に出頭しなかったものと評価される。このような状況下では、裁判所が被告人の陳述を聴くことなく手続を進めることに違法はない。
結論
被告人が正当な理由なく公判期日に出頭しない場合には、被告人の陳述を聴かずに判決をすることができ、原判決の判断は正当である。
実務上の射程
控訴審における被告人の出頭義務と、不出頭時の不利益(陳述権の喪失)に関する射程を持つ。実務上、診断書の形式要件(医師の住所氏名や特定の記載事項等)を欠く場合には、被告人の防御権行使の機会を奪う形での審理進行が許容されることを示しており、手続の定型性と迅速性を重視する判断枠組みとして活用できる。
事件番号: 昭和26(れ)312 / 裁判年月日: 昭和26年9月14日 / 結論: 破棄差戻
【結論(判旨の要点)】被告人の住所が記録上明らかであるにもかかわらず、送達報告書の誤記により送達不能となったことをもって、直ちに「住居等が知れないとき」に該当するとして公示送達を行うことは違法である。 第1 事案の概要:被告人の適正な住所は東京都台東区内の「b番地」であることが記録上明らかであった。しかし、第一回公判期…