判旨
横領罪における「自己の占有する他人の物」の占有とは、目的物に対する事実上の支配を意味し、必ずしも現実に物理的な所持を継続していることを要しない。
問題の所在(論点)
横領罪の成立要件である「占有」が認められるためには、犯人が目的物を現実に所持していることが必要か。
規範
横領罪(刑法252条1項)における「占有」とは、目的物に対する濫用のおそれがある支配力を有することをいい、必ずしも物を現実に所持することを意味するものではない。
重要事実
被告人Aは、被告人Bを責任者として旧C製作所に派遣した。Bらは、数日間にわたりトラック等を用いて同所から棒鋼、鋼線、亜鉛引鉄板などの原材料(合計約61トン)を引き取り、指定の工場等へ運び出した。その後、被告人両名は、これらの引取物件について整理保管する責任を負う立場にあったが、これを不法に領得したとして横領罪に問われた。
あてはめ
被告人らは、責任者として派遣され、大量の原材料をトラックで運び出すという具体的・物理的な移動に関与している。また、運び出した物件について「整理保管の責」に任じていた。このような事情の下では、たとえ常に物件を物理的に手元に置いていなくとも、その物件を法的に支配し、自由に処分しうる状態にあるといえる。したがって、被告人らは本件物件を「占有」していたと解される。
結論
横領罪の占有は現実の所持に限られないため、整理保管の責任を負い支配力を有する被告人らには占有が認められ、横領罪が成立する。
実務上の射程
本判決は、横領罪の占有が民法上の占有概念や、窃盗罪における事実的所持とは異なる「濫用のおそれある支配」であることを示唆する。答案上は、物理的所持が希薄なケース(預金、登記、または本件のような大規模な保管業務)において、法的・事務的な支配力を論証する際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和27(あ)293 / 裁判年月日: 昭和28年4月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】横領罪(刑法252条1項)は、自己の占有する「他人の物」を横領することによって成立する。したがって、目的物の所有者が誰であるかという点は、それが「他人」に帰属するものである限り、罪の成否に影響を及ぼさない。 第1 事案の概要:被告人が不動産の横領を問われた事案において、当該不動産の真実の所有者がA…
事件番号: 昭和26(れ)1927 / 裁判年月日: 昭和27年3月14日 / 結論: 棄却
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