以上の経過によると、被告人は、前記原審再度の期日にも予め右期日に出廷不能である特段の具体的事由を具申することもなく、その期日の直前に至つて単に従前どおり潜伏性第二期梅毒により二ケ月間の休養を要する旨の医師の診断書を添付して病気のため出廷し難いから期日を変更せられたい旨を反覆し公判期日の変更を申請したにすぎないのであつて、これに前記その前後の事情を合せ考えれば原審裁判所が右被人の期日変更申請を容れないで被告人は正当の事由なく出頭しないものと認めたことは相当といわなければならない。
旧刑訴法第四〇四条にいわゆる正当の事由のない事例
旧刑訴法404条,旧刑訴法410条8号
判旨
被告人が「潜伏性第二期梅毒」等の診断書を提出して期日変更を申請しても、具体的かつ特段の出廷不能事由を具申せず同様の申請を繰り返す場合は、「正当な理由がない」不出頭に当たり、被告人欠席のまま審理・判決を行うことができる。
問題の所在(論点)
被告人が医師の診断書を提出して病気による期日変更を申請している場合において、具体的な出廷不能事由を疎明しないまま欠席したことをもって「正当な理由がない」不出頭(旧刑訴法404条、現行法394条・286条等参照)と認め、被告人抜きで審理・判決をすることが許されるか。
規範
公判期日への出頭義務に関し、被告人が病気を理由に期日変更を申請したとしても、単に抽象的な病名や療養期間を記した診断書を提出するのみで、期日に出廷することが不可能である具体的・特段の事情を具体的に具申しない場合には、正当な理由のない不出頭と判断して差し支えない。
重要事実
被告人は控訴審の第一回公判期日に、第二期梅毒で安静を要する旨の診断書を添えて期日変更を申請し欠席した。続く第二回期日にも、適法な送達を受けながら、期日の直前に「潜伏性第二期梅毒、2ヶ月の休養を要する」旨の診断書を提出し、前回と同様に期日変更を申請して欠席した。しかし、被告人は一審の保釈中には各公判期日に出頭しており、今回の申請においても具体的な歩行困難等の事情は事後的に弁護人が主張するに留まっていた。
あてはめ
被告人は適法な召喚を受けながら、期日の直前に至って単に従前と同様の診断書を添付し、期日変更申請を繰り返したに過ぎない。出廷不能である特段の具体的事由を予め具申しておらず、一審での出頭状況等の前後の事情を併せれば、裁判所が期日変更申請を却下し、被告人が正当な理由なく出頭しないものと認めたことは相当である。したがって、被告人不出頭のまま審理を遂げ判決を言い渡した手続に違法はない。
結論
被告人の不出頭に正当な理由がないと認めた原審の判断は相当であり、被告人抜きで行われた審理および判決に訴訟手続上の法令違反は存在しない。
実務上の射程
被告人が病気を口実に公判を遅延させる意図がある場合、裁判所は診断書の形式的な提出に拘束されず、具体的な支障の有無や訴訟経過から出頭の可否を実質的に判断できることを示す。実務上、診断書の信用性や内容の具体性を厳格に吟味する際の論拠となる。
事件番号: 昭和26(れ)1672 / 裁判年月日: 昭和26年11月30日 / 結論: 棄却
被告人が昭和二六年二月一二日の原審第一回公判期日及び同年三月九日の第二回公判期日に適法な召喚手続を受けるながら、右各公判期日前にいずれも刑訴規則第一八三条の方式に適合しない医師某作成の病名胃潰瘍一日休養を要する旨の診断書を提出したのみで、他に不出頭の事由を疏明する資料を提出せず、右各期日を懈怠した場合は、旧刑訴第四〇四…