判旨
訴訟を遅延させる目的のみでなされた裁判官の忌避申立ては、適法な忌避申立てとしての要件を欠き、却下されるべきものである。また、特別抗告において憲法適否の判断が示されていない原決定を争うことは、適法な要件を欠く。
問題の所在(論点)
訴訟遅延のみを目的とする忌避申立ての却下決定に対し、憲法違反を理由とする特別抗告が許容されるか。刑事訴訟法上の忌避権の限界と、特別抗告の対象となる憲法判断の有無が問題となる。
規範
訴訟を遅延させる目的のみでなされた忌避申立ては不適法であり、これを却下した判断が憲法に違反するか否かの判断を含まない場合、当該決定に対する特別抗告は適法な要件を欠く。判断の枠組みとして、申立てが真に裁判の公正を期するものではなく、専ら手続の妨害を目的とする場合は、訴訟上の権利の濫用として排斥される。
重要事実
抗告人は裁判官に対する忌避申立てを行ったが、原審(下級審)はこの申立てを、旧刑事訴訟法29条に基づき「訴訟を遅延せしむる目的のみをもってなされたもの」と認定して却下した。これに対し、抗告人は憲法違反等を理由に特別抗告を申し立てたが、原審の決定自体には憲法の適否に関する判断は含まれていなかった。
あてはめ
本件において、原審は抗告人の忌避申立てが訴訟遅延のみを目的とするものであると事実認定している。このような目的による申立ては、刑事訴訟法が認める忌避制度の本来の趣旨を逸脱するものであり、却下は正当である。また、特別抗告は原審の憲法適否の判断を対象とすべきところ、原審は単に申立ての目的を認定して却下したに過ぎず、憲法判断を行っていない。したがって、不服申立ての前提を欠いているといえる。
結論
本件抗告は特別抗告の適法な要件を欠くため、棄却される。訴訟遅延目的の忌避申立て却下は適法であり、それ自体は直ちに憲法問題を生じさせるものではない。
実務上の射程
裁判官の忌避(刑訴法21条等)に関する論点において、申立てが「訴訟遅延のみを目的とする」場合には、簡易却下決定(刑訴法24条1項)が許容される根拠として活用できる。答案上は、手続的正義と訴訟経済の調和の観点から、権利濫用的な申立てを排除する実務上の運用を裏付ける判例として位置づけられる。
事件番号: 昭和51(あ)1626 / 裁判年月日: 昭和52年1月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】旧判例が既に変更されている場合や、引用判決が事案を異にし適切でない場合、刑訴法405条の上告理由(判例違反)には当たらない。 第1 事案の概要:上告人は、原判決が大正2年の大審院判決2件および昭和26年の最高裁判決に違反すると主張した。しかし、当該大正2年の判決については、昭和30年および昭和33…
事件番号: 昭和26(ク)143 / 裁判年月日: 昭和26年8月24日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所に対する抗告は、原決定における憲法判断の不当を理由とする場合に限られ、単なる訴訟法違反の主張を憲法違反に名を借りて述べることは許されない。 第1 事案の概要:抗告人は、立証準備のための公判期日続行申請が容れられなかったことが裁判官の忌避事由に当たると主張し、忌避申立却下決定に対する抗告を…