判例既変更とした事例(権利行使と恐喝罪成否に関するもの)
判旨
旧判例が既に変更されている場合や、引用判決が事案を異にし適切でない場合、刑訴法405条の上告理由(判例違反)には当たらない。
問題の所在(論点)
刑訴法405条所定の上告理由(判例違反)において、既に最高裁によって変更された過去の大審院判決や、事案を異にする判決を引用して憲法・法令違反を主張することが認められるか。
規範
刑訴法405条2号および3号に規定する「判例」とは、現在において有効な最高裁判所(または大審院)の判断を指す。既に後の最高裁判所判決により実質的に変更された大審院時代の旧判例を引用し、これに反することを主張しても、同条の上告理由としての判例違反を構成しない。また、事案の性質が著しく異なり、判断の前提が適合しない判例を引用する場合も同様である。
重要事実
上告人は、原判決が大正2年の大審院判決2件および昭和26年の最高裁判決に違反すると主張した。しかし、当該大正2年の判決については、昭和30年および昭和33年の最高裁判決によって既に判断が変更されており、現在は有効な先例としての価値を失っていた。また、昭和26年の最高裁判決については、本件とは事案の内容が異なるものであった。
あてはめ
本件で引用された大正2年の大審院判決は、昭和30年10月14日第二小法廷判決および昭和33年5月6日第三小法廷判決によって既に変更されている。判例違反を理由に上告するには、現時点において司法の統一を図るべき基準となる「有効な判例」との矛盾を指摘する必要があるが、上告人の主張は無効となった旧判断を基礎とするものであり、不当である。また、昭和26年の判決は事案の基礎が異なり、本件判断に適用されるべき射程外のものであるといえる。したがって、これらへの抵触をいう点は、判例違反の主張としての実質を欠く。
結論
本件上告は刑訴法405条の上告理由に当たらないため、棄却されるべきである。
実務上の射程
上告趣意書作成において、変更済みの判例や射程の異なる判例を引用しても上告受理の要件を満たさないことを示す実務上の指針となる。
事件番号: 昭和39(あ)258 / 裁判年月日: 昭和39年6月26日 / 結論: 棄却
判例違反を主張する所論引用の大正一二年(れ)第一八〇五号同一三年三月五日大審院決定は、当裁判所の判例により変更されたものである(昭和二六年(れ)第七七号同年六月一日第二小法廷判決、刑集五巻七号一二二二頁・昭和二七年(あ)第六五九六号同三〇年一〇月一四日第二小法廷判決、刑集九巻一一号二一七三頁・昭和三一年(あ)第四六九号…