判旨
判決書への署名押印に代えて、他の裁判官がその事由を付記して署名押印することは、刑事訴訟法上の適法な手続である。
問題の所在(論点)
裁判官が出張等の事由により署名押印できない場合に、他の裁判官が代行して事由を付記する手続が、刑事訴訟法上の上告理由(405条)や職権破棄事由(411条)に該当するか。
規範
裁判官が判決書に署名押印することができない場合には、他の裁判官が判決書にその事由を付記して署名押印しなければならない(刑事訴訟法46条参照)。この手続が適正になされている限り、構成裁判官の一部が欠けていても判決の効力に影響を及ぼさない。
重要事実
被告人が上告を申し立てた事案において、原審または最高裁判所の合議体の一員である裁判官小谷勝重が、出張中であったため判決書への署名押印をすることができなかった。これに対し、裁判長裁判官がその旨の事由を付記して署名押印を行った。
あてはめ
本件記録を精査したところ、裁判官小谷勝重が署名押印できない理由として「出張中」であることが明記されており、裁判長がこれに代わって署名押印する手続が適正に踏まれている。このような手続は刑事訴訟法が予定する正当なものであり、判決の正当性を損なうような違法は認められない。
結論
本件上告は刑訴法405条の上告理由に当たらず、また同法411条を適用して職権で原判決を破棄すべき事由も認められないため、上告を棄却する。
実務上の射程
裁判官の一部が署名押印を欠く場合でも、法に定められた代行手続(事由の付記と他裁判官による署名押印)が履践されていれば、判決の形式的妥当性は維持される。実務上、判決の成立過程の瑕疵を争う際の限界を示すものである。
事件番号: 昭和25(あ)1027 / 裁判年月日: 昭和26年5月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判官が公務のため出張しており署名押印が不可能な場合、他の裁判官がその理由を付記して署名押印すれば、当該判決の効力に影響を及ぼさない。 第1 事案の概要:本件の上告審において、判決に関与した合議体の裁判官のうち一人が、判決作成時において公務により出張中であった。そのため、当該裁判官は判決書に自ら署…