原判決の裁判書には、単にA裁判長及びB判事の両名のみが署名押印しており、右審判に関与したものと思われるC判事の署名押印はなく、またその署名押印いことについての裁判長の事由附記もないときは、刑訴規則五五条に違反したものであり、しかもかかる法令違反は、判決に影響を及ぼすべきものであることは勿論であり刑訴四一一条を適用するを相当とする。
審判に関与した判事の署名押印を欠く判決の違法と刑訴法第四一一条第一号
刑訴法411条1号,刑訴規則55条
判旨
判決書に審理に関与した裁判官の署名押印がなく、裁判長によるその旨の附記もない場合、刑事訴訟規則55条に違反し、判決に影響を及ぼすべき法令違反として破棄事由となる。
問題の所在(論点)
審理に関与した裁判官の署名押印を欠き、かつその理由の附記もない判決書の有効性と、それが刑訴法411条の破棄事由に該当するか。
規範
判決書には、判決をした裁判官が署名押印しなければならず、裁判官が署名押印できないときは他の裁判官がその理由を附記して署名押印しなければならない(刑事訴訟規則55条)。この手続的要件の欠如は、原則として判決に影響を及ぼすべき法令違反(刑事訴訟法411条1号)にあたる。
重要事実
原審の第一回公判期日には裁判長判事A、判事C、判事Bの3名が出席して審理が行われ、同日に弁論が終結した。しかし、第二回公判期日に宣告された原判決の裁判書には、A裁判長およびB判事の2名のみが署名押印しており、審理に関与したC判事の署名押印がなかった。また、C判事が署名押印できない理由についての裁判長による事実の附記も存在しなかった。
あてはめ
本件では、記録上審理に関与したことが明らかなC判事の署名押印が判決書に欠落している。また、刑事訴訟規則55条が定める「署名押印できない場合の理由附記」という補完手続も執られていない。このような判決書の形式的備給を欠く状態は、適正な裁判の成立を担保する手続規定に明白に違反するものであり、判決の結果に影響を及ぼすべき重大な法令違反であると評価される。
結論
原判決には刑事訴訟規則55条違反があり、判決に影響を及ぼすべき法令違反があるため、原判決を破棄し、本件を高等裁判所に差し戻す。
実務上の射程
裁判所の構成や判決書の成立過程という形式的適法性を争う際の根拠となる。答案上では、判決書の成立要件(刑訴法46条・規則55条)を検討する際の規範として活用できる。
事件番号: 昭和26(れ)1675 / 裁判年月日: 昭和26年11月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】本判決は、刑事訴訟法405条の上告理由に該当しない事案について、記録を精査しても同法411条を適用して職権で判決を取り消すべき事由が認められない場合、上告を棄却すべきであることを示した。 第1 事案の概要:被告人が原判決の不服を申し立て、弁護人が上告趣意を提出して上告を提起した事案である。しかし、…