判旨
共謀共同正犯が成立するためには、共謀者の一人が共謀に基づいて犯罪を実行した場合には、実行行為に加担しなかった者も、その結果について共同正犯としての責任を負う。
問題の所在(論点)
実行行為に直接加担していない共謀者が、刑法60条の「共同して犯罪を実行した者」として、共同正犯の責任を負うか(共謀共同正犯の成否)。
規範
共謀共同正犯(刑法60条)が成立するためには、①二人以上の者が、特定の犯罪を行うために共同して実行する意思(共謀)を有し、②その共謀に基づき、共謀者の一部が当該犯罪の実行行為に出ることが必要である。この場合、実行行為に直接関与しなかった者も、他者の行為を自己の手段として利用したといえるため、正犯としての責任を免れない。
重要事実
被告人A、B、C、Dらは、特定の犯罪を遂行することを互いに合意(共謀)した。その後、この共謀に基づき、メンバーの一部が実際の犯罪行為に及んだ。被告人らの中には、現場で直接実行行為を担当しなかった者も含まれていたが、検察側は全員を共同正犯として起訴した。弁護人は、実行行為に加担していない者の刑事責任を争い上告した。
あてはめ
本件において被告人らは、特定の犯罪を実現しようという共通の意思(共謀)を有していたと認められる。そして、一部の被告人がその共謀の計画に従って実際の犯行に及んでいる。このように、共謀に基づいて犯罪が実行された以上、たとえ現場で直接手を下していない被告人であっても、他の共謀者の行為を介して自己の意思を実現したものと評価できる。したがって、全員に共同正犯の成立が認められる。
結論
被告人らには共謀共同正犯が成立し、各自が当該犯罪の全責任を負う。本件各上告は棄却される。
実務上の射程
事件番号: 昭和38(あ)2921 / 裁判年月日: 昭和39年11月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】共謀共同正犯の成立には、共謀者間で犯罪の具体的計画につき意思の合致があることを要するが、包括的な命令であっても、それに基づき順次共謀が遂げられれば共謀の成立を妨げない。また、共謀の一部に「殺傷もやむを得ない」という未必的な認識が含まれる場合であっても、殺人の共謀として認めることができる。 第1 事…
共謀共同正犯の成立を認めたリーディングケース(練馬事件)。答案上では、実行行為の一部を分担していない者の処罰根拠を問われた際に、本判決の法理を引用し、共謀の存在と共謀に基づく実行行為の有無を検討する。特に組織的犯罪において重要となる。
事件番号: 昭和58(あ)531 / 裁判年月日: 昭和59年3月6日 / 結論: 棄却
謀議の内容において被害者の殺害を一定の事態の発生にかからせており、犯意自体が未必的なものであつたとしても、実行行為の意思が確定的であつたときは、いわゆる共謀共同正犯者としての殺人の故意の成立に欠けるところはない。
事件番号: 昭和25(あ)1243 / 裁判年月日: 昭和26年8月9日 / 結論: 棄却
本件第一審判決は、弁護人の正当防衛の主張を排斥して「Aが拳銃を携えていたことは認め得るが、同人が拳銃を被告人の心臓部に突き付けたということは之を認め難く、従つて未だ急迫不正の侵害行為があつたとは謂い得ない」と判示し、原判決もこの認定を是認したのである。「被害者が拳銃を所持していたことを認め」たからとて、それは必ずしも所…
事件番号: 昭和51(あ)931 / 裁判年月日: 昭和51年10月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】共謀共同正犯の成立には、共謀の事実、及びその共謀に基づく実行行為が必要であり、構成要件に該当する事実を共同して実現する意思の連絡が認められれば、実行行為の一部を自ら分担しない者であっても刑法60条の正犯としての責任を負う。 第1 事案の概要:被告人Aおよび被告人Bを含む複数名が、特定の犯罪(本件各…
事件番号: 昭和24(れ)1719 / 裁判年月日: 昭和24年11月8日 / 結論: 棄却
原判決は、被告人の判示第一の犯行につき、その犯意の證明として「若し日本刀や匕首で相手を斬り付けるときは、斬り所によつては當然相手を死に到らしめることを豫想しながら」本件犯行に出たことを記載している。自己の行爲が他人を死亡させるかも知れないと意識しながら敢えてその行爲に出た場合が殺人罪のいわゆる未必の故意ある場合に當るこ…