憲法三八条三項違反の主張が欠前提とされた事例
憲法38条
判旨
共謀共同正犯の成立には、共謀の事実、及びその共謀に基づく実行行為が必要であり、構成要件に該当する事実を共同して実現する意思の連絡が認められれば、実行行為の一部を自ら分担しない者であっても刑法60条の正犯としての責任を負う。
問題の所在(論点)
実行行為の一部を直接分担していない者についても、共謀の事実のみをもって刑法60条の「共同して犯罪を実行した」ものとして共同正犯(いわゆる共謀共同正犯)の責任を問うことができるか。
規範
刑法60条の共同正犯が成立するためには、①2人以上の者が、特定の犯罪を行うために共同して実行する合意(共謀)をし、②その共謀に基づき、共犯者の少なくとも一人が実行行為に及ぶことが必要である。共謀とは、単なる意思の合致のみならず、互いに他人の行為を利用して自己の意思を達成しようとする意思の連絡を指す。
重要事実
被告人Aおよび被告人Bを含む複数名が、特定の犯罪(本件各上告に関連する犯罪)の遂行について計画・合意した。被告人らは、自ら実行行為の全てを直接担当したわけではないが、共謀に基づいて他者の行為を介して犯罪を実現しようとした。一審・二審では、被告人らが刑法60条に基づき正犯として処罰されたため、被告人側は憲法違反や刑法60条の解釈誤りを理由に上告した。
あてはめ
本件において、被告人らの主張は実質的に刑法60条の解釈および適用の誤りをいうものであるが、記録によれば、被告人らの間に特定の犯罪を実現するための意思の連絡(共謀)があったことが認められる。共謀に基づき共犯者が実行行為に及んでいる以上、被告人らが自ら実行行為の現場にいたか、あるいは物理的な分担行為を行ったかにかかわらず、その共謀の範囲内において正犯としての責任を負うと解される。
事件番号: 昭和58(あ)531 / 裁判年月日: 昭和59年3月6日 / 結論: 棄却
謀議の内容において被害者の殺害を一定の事態の発生にかからせており、犯意自体が未必的なものであつたとしても、実行行為の意思が確定的であつたときは、いわゆる共謀共同正犯者としての殺人の故意の成立に欠けるところはない。
結論
被告人らについて刑法60条の共同正犯(共謀共同正犯)の成立を認めた原判決に法令違反の誤りはなく、上告を棄却する。
実務上の射程
共謀共同正犯の成立要件(共謀、共謀に基づく実行)を明示した判例であり、司法試験においては「共同正犯の処罰根拠(相互利用補充関係)」に基づき、実行行為を分担していない者の正犯性を論じる際の規範として利用する。特に、共謀の認定(意思の連絡)と、それが実行行為と論理的に結びついているかをあてはめで示すことが重要となる。
事件番号: 昭和38(あ)2921 / 裁判年月日: 昭和39年11月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】共謀共同正犯の成立には、共謀者間で犯罪の具体的計画につき意思の合致があることを要するが、包括的な命令であっても、それに基づき順次共謀が遂げられれば共謀の成立を妨げない。また、共謀の一部に「殺傷もやむを得ない」という未必的な認識が含まれる場合であっても、殺人の共謀として認めることができる。 第1 事…
事件番号: 昭和56(あ)1004 / 裁判年月日: 昭和56年12月21日 / 結論: 棄却
謀議された計画の内容においては被害者の殺害を一定の事態の発生にかからせていたとしても、そのような殺害計画を遂行しようとする意思が確定的であつたときは、殺人の故意の成立に欠けるところはない。
事件番号: 昭和26(れ)1847 / 裁判年月日: 昭和27年2月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】共謀共同正犯が成立するためには、共謀者の一人が共謀に基づいて犯罪を実行した場合には、実行行為に加担しなかった者も、その結果について共同正犯としての責任を負う。 第1 事案の概要:被告人A、B、C、Dらは、特定の犯罪を遂行することを互いに合意(共謀)した。その後、この共謀に基づき、メンバーの一部が実…
事件番号: 平成21(あ)68 / 裁判年月日: 平成24年10月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】暴力団組長による3件の殺人等につき、組織的な犯行であること、3名の生命を奪った結果の重大性、首謀者としての責任の重さを重視し、被害者遺族への被害弁済等の有利な事情を最大限考慮しても、死刑の選択はやむを得ない。 第1 事案の概要:暴力団組長である被告人は、配下組員と共謀し、(1)保険金詐欺の口封じ、…