法律上、他人より財物の交付を受け又は財産上の利得を領得すべき正当の権利を有する者が、その権利を実行するにあたり、欺罔又は恐喝の手段を用いて義務の履行をなさしめて財産の交付を受け又は財産上の利益を領得するも、詐欺恐喝の罪を構成することなしとした大審院刑事総部連合の判決(大正二年(れ)第一二一一号同年一二月二三日宣告)は、債権を回収するためとはいえ、虚言をもつて被害者をおびき出した上、突如野球用バツトにその頭部を強打して昏倒させ、その所持していた金品を強取した事案に対しては、判例として適切でない。
正当な権利を有する者がその権利を実行するにあたり詐欺恐喝の手段を用いた場合に関する判例と債権回収の目的でした強盗行為
刑法236条,刑法246条,刑法249条,刑訴法405条3号
判旨
強盗罪の成立に必要な暴行・脅迫については、相手方の反抗を抑圧するに足りる程度のものであることを要するが、事案の具体的な方法によっては従来の大審院判例の枠組みを超えて肯定され得る。
問題の所在(論点)
強盗罪における「暴行・脅迫」の程度に関し、大審院判例との齟齬があるか、および本件の犯行態様が反抗を抑圧するに足りる程度に達しているか。
規範
強盗罪(刑法236条)における「暴行又は脅迫」は、相手方の反抗を抑圧するに足りる程度のものであることを要する。その判断にあたっては、単に物理的な力のみならず、犯行の態様、周囲の状況、被害者の属性等を総合的に考慮して判断すべきである。
重要事実
被告人AおよびBが共謀の上、特定の場所において強盗に及んだ事案である。弁護人は、本件の行為が従来の大審院判例が示す強盗罪の暴行・脅迫の要件を満たさない旨を主張して上告したが、一審・二審ともに強盗罪の成立を肯定していた。なお、具体的な暴行の内容や被害者の状況等の詳細は、本判決文(上告棄却判決)の記載のみからは不明である。
あてはめ
最高裁は、弁護人が引用する大審院の判例は「本件の如き方法による強盗の事案については適切でない」と判示し、原審の事実認定に基づけば強盗罪の成立を肯定できると判断した。これは、判例が画一的な基準に縛られるのではなく、本件で採用された「方法(具体的な犯行態様)」を重視し、それが客観的に見て被害者の反抗を抑圧するに足りるものと評価できることを示唆している。
結論
被告人らの行為は強盗罪の構成要件たる暴行・脅迫に該当し、強盗罪が成立する。上告棄却。
実務上の射程
強盗罪の暴行・脅迫の程度(反抗抑圧の有無)を判断する際、先行する大審院判例が必ずしも全ての事案を拘束するものではないことを示す。答案上は、物理的強度の多寡だけでなく、犯行の「方法」や具体的状況から総合的に反抗抑圧の有無を論じる際の根拠となる。
事件番号: 昭和23(れ)1879 / 裁判年月日: 昭和24年5月7日 / 結論: 棄却
しかし犯人によつてなされた暴行又は脅迫が社會通念上相手方の反抗を抑壓する程度のものであつて、右暴行又は脅迫と財物の奪取との間に因果關係がある以上は、被害者自身は單に畏怖されたに止つたとしても又被害者自ら財物を交付したとしても強盜罪が成立するものであつて、恐喝罪とはならないことは當裁判所の判例とするところである(昭和二三…