判旨
強盗罪の暴行・脅迫は、被害者の反抗を抑圧するに足りる程度のものであることを要し、その判断は日時、場所、手段方法等の諸般の事情を総合して行うべきである。また、最初の脅迫によって生じた畏怖状態が継続している間に財物を奪取した場合、強盗罪が成立する。
問題の所在(論点)
強盗罪における脅迫の程度(反抗抑圧性)の判断基準、および先行する脅迫によって生じた畏怖状態を利用して後身の財物を奪取した場合に強盗罪が成立するか(脅迫の継続性)。
規範
刑法236条1項の強盗罪における「脅迫」とは、相手方の反抗を抑圧するに足りる程度のものをいう。その該当性は、行為の具体的状況(日時、場所、手段方法等)を客観的に考慮して判断する。また、強取の認定にあたっては、先行する脅迫行為によって生じた畏怖状態が、財物奪取の時点まで継続していたか否かを重視すべきである。
重要事実
被告人は共犯者と共謀し、夜間、路上で被害者を呼び止めて後方から抱き締め、田圃に連れ込んだ。そこで切出ナイフ等を突き付けて脅迫し、現金と腕時計を強取した。さらに洋服を強取しようとしたが、被害者が哀願したため、被害者宅付近まで同行。その間も脅迫による畏怖状態は続いており、最終的に洋服の代わりに現金1万円を強取した。
あてはめ
本件では、夜間にナイフを突き付けて田圃に連れ込むという手段方法に照らせば、被害者の反抗を抑圧するに足りる程度の脅迫があったといえる。また、被害者が「洋服は許してくれ」と哀願し、自宅付近まで同行して現金を差し出すに至った過程を見ても、最初の脅迫による畏怖状態は解けておらず、最後の現金1万円の強取まで継続していたと評価される。
結論
被告人の行為は、通常被害者をして反抗を抑圧せしめる程度の脅迫にあたり、かつその状態を利用して財物を奪取したものであるから、強盗罪が成立する。
実務上の射程
強盗罪の実行行為(暴行・脅迫)の程度と、財物奪取との関連性(畏怖状態の継続)を示す典型的な判例である。答案では、単なる恐喝との区別において「反抗抑圧性」を論じる際の根拠として、また一連の行為の中で財物奪取が繰り返される事案での「継続性」の認定において引用すべきである。
事件番号: 昭和23(れ)334 / 裁判年月日: 昭和23年6月26日 / 結論: 棄却
強盗犯人の用いた脅迫の手段が相手方の意思の自由を抑壓するに足るものであつた以上、偶々相手方がそれに依つて意思の自由を抑壓される事がなかつたとしても強盗未遂罪は成立する。
事件番号: 昭和23(れ)1879 / 裁判年月日: 昭和24年5月7日 / 結論: 棄却
しかし犯人によつてなされた暴行又は脅迫が社會通念上相手方の反抗を抑壓する程度のものであつて、右暴行又は脅迫と財物の奪取との間に因果關係がある以上は、被害者自身は單に畏怖されたに止つたとしても又被害者自ら財物を交付したとしても強盜罪が成立するものであつて、恐喝罪とはならないことは當裁判所の判例とするところである(昭和二三…
事件番号: 昭和23(れ)795 / 裁判年月日: 昭和23年11月18日 / 結論: 棄却
一 少年法第七一條第一項の趣旨は、裁判所が審理した結果被告人等に對して所論のごとく保護處分をなすのを相當と認めた場合には少年審判所に事件を送致しなければならぬのであるが、被告人等に對して保護處分をするのが相當であるか否かは、事實審たる原裁判所が諸般の具體的事情を考慮して定むべきものであつてその裁量權にのみ屬するところで…