判旨
自白の補強証拠は犯罪の客観的事実について存在すれば足り、犯人と犯罪の結びつきまで証明する必要はない。また、不当に長い拘禁後の自白であっても、拘禁と自白との間に因果関係がない場合には証拠能力が認められる。
問題の所在(論点)
1. 補強証拠の範囲として犯人性(犯罪と犯人の結びつき)までの補強を要するか。2. 不当に長い拘禁後の自白として証拠能力が否定されるべきか(拘禁と自白の因果関係の要否)。
規範
1. 憲法38条3項及び刑事訴訟法(新法319条2項相当)の補強法則において、補強証拠は犯罪事実の客観的部分について存在すれば足り、犯人と被告人の結びつき(犯人性)まで及ぶ必要はない。2. 憲法38条2項及び刑事訴訟法(新法319条1項相当)の自白排除法則に関し、不当に長い拘禁後の自白であっても、拘禁と自白との間に因果関係が認められない場合には、その証拠能力を否定すべきではない。
重要事実
被告人は、昭和21年に勾留された後、執行停止中の逃走、別罪の犯行、再度の逮捕、保釈、さらに別罪での有罪判決による保釈取消しと収監を経て、通算16ヶ月に満たない期間勾留されていた。被告人は当初の逮捕後間もなく自白し、その後も一貫して自白を繰り返していた。弁護人は、数年にわたる長期拘禁後の自白であり、かつ自白と被害始末書のみによる事実認定は違法であると主張して上告した。
あてはめ
1. 補強証拠については、自白と被害始末書が存在しており、犯罪の客観的側面が証明されている以上、事実認定に違法はない。2. 拘禁期間については、逃走や別罪による中断を含め通算16ヶ月に満たず、弁護人が主張する「数年にわたる長期拘禁」という事実は存在しない。また、被告人は逮捕後速やかに自白を始めており、その後の自白も継続的なものであるから、拘禁と自白の間に因果関係は認められない。
結論
1. 補強証拠は客観的事実に存すれば足りるため、本件の事実認定に違憲・違法はない。2. 拘禁と自白に因果関係がないため、不当に長い拘禁後の自白として証拠能力を否定することはできない。
実務上の射程
現代の司法試験においては、補強法則の範囲に関する「実体真実主義」と「人権保障」のバランスを論じる際の判例根拠として活用できる(客観説)。また、自白排除法則における「不当に長い拘禁」の判断にあたり、期間の計算方法や自白との因果関係という論理構成を示すものとして有用である。
事件番号: 昭和24(れ)401 / 裁判年月日: 昭和24年5月7日 / 結論: 棄却
一 しかし被告人は同年七月七日檢事に對して本件犯行を自白し次いで同月二九日第一審公判廷においても自白しているのであつて、原審公判廷の自白も従前の自白を繰返したものに過ぎないのであるから右自白と拘禁との間には因果関係のないことが明かである。然らば原審が右自白を證據としたからといつて憲法第三八條第二項刑訴應急措置法第二〇條…
事件番号: 昭和22(れ)136 / 裁判年月日: 昭和22年12月16日 / 結論: 棄却
犯罪事實の一部について證據として本人の自白があるだけで他の證據がない場合でも、その自白と他の證據を綜合して、犯罪事實全體を認定することは、刑訴應急措置法第一〇條第三項の規定に違反するものではない。