判旨
不利益変更禁止の原則は、上告審が原判決を破棄して事件を控訴審に差し戻した場合にも適用され、差戻後の控訴審は差戻前の控訴審判決よりも重い刑を言い渡すことはできない。
問題の所在(論点)
上告審から差し戻された後の裁判において、差戻前の判決よりも重い刑を言い渡すことが許されるか。不利益変更禁止の原則(刑訴法402条の精神)が差戻後の判決にも及ぶかどうかが問題となる。
規範
被告人が上告したことによって破棄差戻しとなった場合、差戻後の裁判においても、旧刑事訴訟法452条(現行刑訴法402条参照)の規定の精神に鑑み、不利益変更禁止の原則が適用される。したがって、差戻後の判決は、特段の事情がない限り、破棄された差戻前の判決よりも重い刑を科すことは許されない。
重要事実
被告人が贈賄等の公訴事実により第一審で有罪判決を受け、控訴審(広島高裁)において懲役6月、執行猶予2年の判決を言い渡された。被告人がこの控訴審判決を不服として上告したところ、最高裁判所は原判決を破棄し、事件を広島高裁に差し戻した。ところが、差戻後の控訴審は、同一の犯罪事実を認定しながら、被告人に対し差戻前より重い懲役1年、執行猶予2年の判決を言い渡した。
あてはめ
本件において、被告人の上告により最高裁が差戻前の控訴審判決を破棄した結果、再び控訴審で審理が行われた。差戻後の控訴審は独自の証拠に基づき判断しているものの、認定した犯罪事実は差戻前と同一である。このような過程を経て下される差戻後の判決も、被告人の上告を端緒とする一連の不服申立手続の一環であり、被告人の上告権行使を保障する観点から、差戻前の判決の刑を上回ることは許されないと解される。
結論
差戻後の控訴審判決が差戻前の判決よりも重い刑を言い渡したことは、不利益変更禁止の原則に反し違法である。原判決を破棄し、差戻前の刑と同等の懲役6月、執行猶予2年の自判をすべきである。
実務上の射程
本判決は旧刑訴法下の事案であるが、現行刑訴法402条(および451条等)の解釈としても維持されている。被告人のみによる上訴によって開始された差戻後の審理において、攻撃防御の対象が同一である限り、事実認定の基礎となる証拠が異なっても不利益変更禁止の原則が及ぶことを示す実務上の重要判例である。
事件番号: 昭和30(あ)2523 / 裁判年月日: 昭和31年4月19日 / 結論: その他
第一審判決は、主文において贈賄をした被告人四名を各罰金に、収賄をした被告人三名を各懲役刑に処し、各被告人に対し一年間右刑の執行を猶予する旨を記載し、理由の法律適用の部分には第一(贈賄)、二(収賄)事実を区別することなく単に刑法第二五条とのみ記載しあるにすぎないこと並びに公判調書によれば、第一審においては右判決を宣告した…