第一審判決は、主文において贈賄をした被告人四名を各罰金に、収賄をした被告人三名を各懲役刑に処し、各被告人に対し一年間右刑の執行を猶予する旨を記載し、理由の法律適用の部分には第一(贈賄)、二(収賄)事実を区別することなく単に刑法第二五条とのみ記載しあるにすぎないこと並びに公判調書によれば、第一審においては右判決を宣告したものであることが認められる場合においては、罰金刑に処せられた被告人四名に対しても各罰金刑について執行猶予の言渡がなされたものと認むべきであるから、原判決が右各罰金刑について執行猶予の言渡をしなかつたことは刑訴第四〇二条の規定に違反し、同法第四一一条第一号により破棄を免れない。
刑訴法第四一一条第一号にあたる一事例 ―同法第四〇二条違反の場合―
刑訴法411条1号,刑訴法402条
判旨
被告人のみが控訴した事件において、第一審が罰金刑に付した執行猶予の言渡しを、控訴審が理由なく取り消すことは、刑事訴訟法402条の不利益変更禁止の原則に違反する。たとえ第一審の言渡しが真意でないと推測される場合であっても、主文の表現に従い執行猶予の利益は維持されなければならない。
問題の所在(論点)
被告人のみが控訴した事案において、第一審が主文で言い渡した「罰金刑に対する執行猶予」を、控訴審が維持せずに実刑(執行猶予なし)とすることが、刑事訴訟法402条の不利益変更禁止の規定に違反するか。
規範
刑事訴訟法402条の不利益変更禁止の原則により、被告人が控訴した事件については、原判決の刑より重い刑を言い渡すことはできない。これには刑の執行猶予の有無も含まれ、第一審で付与された執行猶予を控訴審で剥奪することは、刑の量定を不当に重くする実質的な不利益変更にあたる。
重要事実
第一審判決は主文において、贈賄罪に問われた被告人4名に対し罰金刑を言い渡すと同時に、確定の日から1年間の執行猶予を付した。これに対し被告人のみが控訴したところ、控訴審(原判決)は罰金刑を維持しつつも、執行猶予の言渡しを付さなかった。記録によれば、第一審裁判官は特定の被告人にのみ執行猶予を付す意図であった可能性も推認されたが、主文上は全員に執行猶予が付されていた。
あてはめ
第一審の主文において、被告人らに対し罰金刑の執行猶予が明示されている以上、客観的に執行猶予の利益が付与されたものと認めざるを得ない。たとえ第一審の真意が懲役刑の被告人のみに執行猶予を付すつもりであったと想像される余地があるとしても、主文の法的効果を否定する根拠にはならない。したがって、被告人のみが控訴した本件において、執行猶予を付さなかった原判決は、第一審よりも被告人に不利益な刑を科したものといえる。
結論
原判決は刑事訴訟法402条に違反し、不当である。被告人らに対し、第一審と同様に罰金刑とともに執行猶予を言い渡すべきである。
実務上の射程
不利益変更禁止の原則における「刑」には、主刑のみならず執行猶予の有無も含まれることを明示した事案である。答案上は、第1審が誤って執行猶予を付した場合であっても、被告人側のみが控訴している限り、控訴審は当該執行猶予を取り消せないという文脈で活用できる。
事件番号: 昭和25(れ)1959 / 裁判年月日: 昭和26年7月20日 / 結論: 棄却
被告人のみから控訴した本件において第一審判決が懲役三月及び二年間右刑の執行を猶予する旨の言渡したのに対し、原判決がそれよりも軽い主刑即ち懲役二月、一年間執行猶予の言渡をしているのであるから、たとえ附加刑たる沒収に代るべき追懲につき原判決が第一審の言渡した額(百二拾円)よりも多い額(千五百円)と言渡したとしても、主文の全…