判旨
判決に刑法60条等の刑法総則の規定の適用を明示しなくても、判決全体から共謀による違反行為と認められる場合は違法ではなく、また刑罰法令の適用を示すには法令名を掲げれば足りる。
問題の所在(論点)
判決において刑法総則(刑法60条等)の適用を明記する必要があるか。また、法令の適用を示す際にどの程度の記載が求められるか。
規範
刑法60条のような刑法総則の規定は、判決にその適用を明示しなくても、判決の趣旨から共謀による実行が明らかであれば違法とはならない。また、判決において法令の適用を示すには、適用された法令の名称を掲げれば足り、詳細な条項の摘示遺脱があっても直ちに法令適用遺脱の違法とはならない。
重要事実
被告人AおよびBは、部下と共謀して、物価統制令および臨時物資需給調整法に違反する取引を行った。原判決は、被告人らの行為を部下との共謀による違反行為と認定し、適用法令として物価統制令等を掲げたが、刑法60条の明示的な適用記載や、連続犯・観念的競合(一所為数法)の具体的な適用順序に関する詳細な擬律の不備が上告理由として争われた。
あてはめ
原判決を全体として観察すれば、被告人らの行為を部下との共謀によるものと認定した趣旨は明らかである。刑法総則の規定は判決に明示しなくても違法ではないとするのが当裁判所の判例である。また、最高裁判所規則(当時)によれば、法令の適用を示すには法令を掲げれば足りる。連続犯と観念的競合のいずれを先に適用しても妨げにならず、原判決が適用法令を掲げている以上、擬律遺脱や適用遺脱の違法は認められない。
結論
被告人らの行為を共謀によるものと認定した原判決に法令適用の違法はなく、上告を棄却する。
実務上の射程
事件番号: 昭和27(あ)5893 / 裁判年月日: 昭和28年5月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】判決に適用法令の誤りがある場合であっても、適用されるべき正しい罰則が同一であり、その違法が判決の結果に影響を及ぼさないときは、原判決を破棄すべき理由にはならない。 第1 事案の概要:被告人は昭和24年3月14日に石油製品の配給に関する違反行為を行った。原判決は、この行為に対して石油製品配給規則11…
判決書における刑法総則(共同正犯や罪数規定)の不備が直ちに破棄事由にならないことを示す。もっとも、司法試験の実務基礎や刑事訴訟法においては、適正な擬律が求められるため、本判決はあくまで「判決書として致命的な違法ではない」という限界事例として理解すべきである。
事件番号: 昭和26(あ)1546 / 裁判年月日: 昭和27年12月19日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】被告人間に共謀が認められ、刑法60条の共同正犯が成立する場合、各被告人は他方の行為を含めた全体の犯罪事実について刑事責任を負う。 第1 事案の概要:被告人A及び被告人Bは、物価統制令に違反し、統制額を超える価格で取引を行ったとして起訴された。第一審判決は、両被告人の間に共謀の事実があることを認定し…