一 仮りに、被告人の物価統制令違反の基礎となる統制額に取引高税を加算しなかつたことが違法であるとしても、被告人等の販売額が取引高税を加算した額を著しく超過したものであること判示に照し明白であるから、右の違法は判決に影響を及ぼしたことが明白であるとはいえない。 二 物品税法二条は、本件物品の販売条件として、その統制額に加算することのできる物品税率を定めた規定であつて、本件統制額を定めた規定ではないから、判決理由の法令適用の箇所に同条の適用を示さなければならないものではない。
一 告示違反の違法があつても判決に影響を及ぼさない一事例 二 物価統制令違反の判決に物品税法の税率を定めた法条の適用を示すことを要するか
清酒粕及び味りん粕の販売価格の統制額指定の件(昭和24物価庁告示117号),物品税法2条,刑訴法411条,刑訴法335条
判旨
物品税法の規定は販売条件として統制額に加算できる税率を定めたものに過ぎず、統制額そのものを定めた規定ではない。したがって、法令適用の箇所において同条を掲示しなくても擬律不備には当たらない。
問題の所在(論点)
統制額違反の罪を認定する際、販売条件として税率の加算を認める物品税法の規定を、判決書の「法令の適用」において明示する必要があるか。
規範
法令適用の表示においては、犯罪の構成要件を画する直接の根拠規定を掲示すべきであり、単に販売価格の算定条件(加算可能な税率等)を定めているに過ぎない補足的な規定までを表示する必要はない。
重要事実
被告人らが、物品の販売に際して定められた統制額を超過する価格で取引を行った。弁護人は、判決が物品税法2条(統制額に加算できる物品税率を定める規定)を法令適用の箇所に示さなかったことが擬律不備であり、判例違反に当たると主張して上告した。
あてはめ
本件における物品税法2条は、あくまで販売条件として統制額に加算できる税率を定めた規定である。これは本件の統制額そのものを画定する根拠規定ではない。被告人らの販売額は、仮に取引高税等を通算したとしてもなお統制額を著しく超過していることが明白である。したがって、同条を法令適用で示さずとも、判決に影響を及ぼすような法令違反や擬律不備は存在しない。
結論
物品税法2条は統制額を定める規定ではないため、法令適用の箇所に同条を掲示する必要はなく、擬律不備には当たらない。上告棄却。
実務上の射程
判決書における法令適用の摘示範囲に関する判断。罪となるべき事実の法的評価に直接関係しない補足的・算定的な規定の不記載は、判決の正当性を左右しないという実務上の取り扱いを確認するもの。
事件番号: 昭和24(れ)3151 / 裁判年月日: 昭和26年6月29日 / 結論: 棄却
物価統制令第一三条の二違反の罪の判決には、法定の統制額を判示することも、該統制額を指定した物価庁告示の適用を示すことも、その必要がない。
事件番号: 昭和26(れ)1392 / 裁判年月日: 昭和27年2月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】判決に刑法60条等の刑法総則の規定の適用を明示しなくても、判決全体から共謀による違反行為と認められる場合は違法ではなく、また刑罰法令の適用を示すには法令名を掲げれば足りる。 第1 事案の概要:被告人AおよびBは、部下と共謀して、物価統制令および臨時物資需給調整法に違反する取引を行った。原判決は、被…