判旨
控訴審判決において、第一審判決の擬律錯誤を説明するために犯罪事実の要旨を摘録した記載は、控訴審独自の犯罪事実の判示とは解されない。
問題の所在(論点)
控訴審判決の理由中で、第一審判決の擬律錯誤を説明するために犯罪事実の要旨を摘録した場合に、これが控訴審独自の犯罪事実の判示に当たるか。
規範
控訴審において、第一審判決の法令適用の誤り(擬律錯誤)を指摘・説明するために、その前提として第一審が認定した犯罪事実を要約して引用・記載することは、事実認定の再判断や新たな判示を意味するものではない。
重要事実
被告人が第一審判決における擬律錯誤を理由として控訴したところ、原審(控訴審)は第一審判決に擬律錯誤があることを説明するため、その理由中で第一審が判示した犯罪事実の要旨を摘録した。これに対し、被告人側は、当該記載を控訴審による犯罪事実の判示であると解した上で、判例違反があるとして上告した。
あてはめ
原判決における犯罪事実の記載は、あくまで第一審判決に擬律錯誤があることを説明するためのプロセスとして、その要旨を便宜上摘録したに過ぎない。したがって、これを控訴審独自の積極的な犯罪事実の判示と評価することはできず、判示の存在を前提とする判例違反の主張は前提を欠くというべきである。
結論
本件記載は犯罪事実の判示とは認められないため、判例違反を理由とする上告は理由がない。
実務上の射程
判決書の記載事項の法的性格を画定する際の参考となる。控訴審が破棄自判する場合や理由を付す際に、引用部分が独自の認定か、単なる説明のための摘録かを区別する視点を示している。ただし、本判決は事案に即した簡潔な判断に留まる。
事件番号: 昭和27(あ)6907 / 裁判年月日: 昭和29年5月11日 / 結論: 棄却
控訴審において事実の確定に影響を及ぼさない事由(本件では量刑不当)により第一審判決を破棄して自判する場合に第一審判決の認定した事実を基礎として法令を適用することの正当であることは、当裁判所の判例とするところであるから(昭和二七年(あ)四一七号同二八年一一月一〇日第三小法廷判決〔集七巻一一号二〇五一頁〕、昭和二七年(あ)…