判旨
不当に長い拘留後の自白として証拠能力が否定されるためには、自白と拘留との間に因果関係があることを要する。第一回予審訊問において既に自白している場合、その後の継続した拘留中にされた同趣旨の供述は、不当に長い拘留後の自白には当たらない。
問題の所在(論点)
予審訊問における自白が、憲法38条2項にいう「不当に長く抑留又は拘禁された後の自白」として、その証拠能力が否定されるか。特に、拘留と自白の因果関係の有無が問題となる。
規範
憲法38条2項が禁止する「不当に長く抑留又は拘禁された後の自白」に該当し証拠能力が否定されるためには、当該抑留・拘禁と自白との間に因果関係が存在することを要する。
重要事実
被告人および相被告人は、昭和21年7月3日の各第一回予審訊問において、本件起訴事実について自白を行った。その後、第二回予審訊問においても同様の趣旨の供述を行ったが、弁護人はこれが不当に長い拘留後の自白にあたり憲法違反であると主張して上告した。
あてはめ
被告人らは、第一回予審訊問という手続の初期段階において既に本件起訴事実を自白している。第二回訊問における供述は、その第一回訊問における自白と同趣旨の内容を継続して述べているに過ぎない。記録上明らかなこれらの経過に照らせば、当該自白と拘留との間に因果関係があるとは認められないため、「不当に長く拘留された後の自白」とは評価できない。
結論
本件自白は憲法38条2項に違反するものではなく、証拠能力が認められる。したがって、本件上告は棄却される。
実務上の射程
自白の任意性や証拠能力を争う際、単に身体拘束期間が長期に及んでいることのみでは足りず、拘禁状態が自白を誘発したという因果関係を主張・立証する必要があることを示す。特に、拘束初期段階で既に自白がなされている事案では、その後の拘束の長期化を理由とする証拠能力の否定は困難である。
事件番号: 昭和28(あ)5227 / 裁判年月日: 昭和29年3月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の自白が存在する場合、その自白の内容を補強するに足りる他の証拠を総合して有罪事実を認定することができる。 第1 事案の概要:被告人Aら両名の弁護人が、第一審判決における事実認定に憲法違反や量刑の不当があると主張して上告した事案。第一審判決では、被告人Aの自供が存在していた。また、判決文からは…