判旨
複数の者が共謀の上、正犯に犯罪を実行させるための方策を講じた場合、直接の実行行為を行わない者であっても、共同して幇助の罪責を負う(共同幇助)。
問題の所在(論点)
正犯に対して幇助行為を共同して行った場合、いかなる罪責を負うか。幇助罪の共同正犯(いわゆる共同幇助)の成否が問題となる。
規範
特定の犯罪を幇助する意思を有し、複数名の間でその幇助行為を共同して行う旨の合意(共謀)に基づき、正犯の実行行為を容易にする物理的または心理的援助を与えた場合、幇助罪の共同正犯(刑法60条、62条1項)が成立する。
重要事実
被告人両名は、Aほか2名と共謀した上で、偽造された公文書である引揚証明書を、その情を知っているBに対して売り渡した。その後、Bは当該証明書を行使して主食を騙取した。被告人らは直接詐欺等の実行行為は行っていないが、その手段となる偽造文書の提供を共同して行ったものである。
あてはめ
被告人らは、単独で幇助を行ったのではなく、Aらとの共謀に基づき役割を分担して行動している。情を知ったBに偽造公文書を売り渡す行為は、Bによる偽造公文書行使罪および詐欺罪の実行を容易にする援助行為にあたる。したがって、共謀に基づきこの援助行為を分担した被告人らには、各罪の幇助についての共同正犯が認められる。
結論
被告人らにつき、偽造公文書行使罪および詐欺罪の共同幇助が成立する。
実務上の射程
本判決は、幇助行為そのものを共同して行う「共同幇助」を肯定したものである。実務上、共謀共同正犯(60条)との区別が重要となるが、正犯の実行行為を自己の犯罪として利用する意思(正犯意思)が欠け、単なる幇助に留まる場合であっても、その幇助行為を共同して行えば本法理が適用される。
事件番号: 昭和24(れ)1921 / 裁判年月日: 昭和27年12月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】数個の公文書が同時に偽造された場合や、偽造と行使が牽連関係にある包括一罪等の関係にある場合、その一罪の一部について起訴があれば、起訴状に直接記載のない残余の部分についても当然に審判の範囲に属する。 第1 事案の概要:被告人らは、公文書を偽造し、これを行使して貨物係員を欺き、タイヤ等を騙取したとして…
事件番号: 昭和27(あ)6146 / 裁判年月日: 昭和28年3月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】共謀共同正犯が成立するためには、事前の打合せや意思の連絡が必要であり、これらが認められない場合には単独犯として処理されるべきである。 第1 事案の概要:上告人は、共犯者が存在する共犯事件であると主張して上告したが、原審(または記録上)では、当該事件において当事者間での事前の打合せ等は認められず、そ…
事件番号: 昭和24(れ)2710 / 裁判年月日: 昭和26年9月28日 / 結論: 棄却
数名の者が詐欺罪を行うことを通謀した以上、実行行為に携わらなかつた通謀者において実行者の具体的欺罔行為の内容を逐一認識しなくても、共同正犯としての責任を負う。