判旨
強姦致傷の事実認定において、傷害の部位程度に関する事実を診断書に基づき認定し、強姦の事実を含む全事実に係る認定を他の証拠と総合して行っても、証拠の採否及び事実認定の論理に違法はない。また、提出された書証の一つ一つについて個別に判断を示す必要はない。
問題の所在(論点)
1. 特定の証拠(診断書)を一部の事実(傷害部位)の認定に用いることの適否、及び2. 提出された個別の証拠(示談書等)に対する判断を逐一判決書に記載する必要性(旧刑訴法下の判断だが現行法にも通じる論理)。
規範
裁判所は、特定の事実(傷害の部位等)を認定するために特定の証拠(診断書等)を用いることができる。事案全体の認定は、挙示された証拠を総合して行われるべきものであり、個々の証拠が直接的にすべての犯罪事実を証明している必要はない。また、判決理由において、証拠の取捨選択に関する判断を個別に逐一説示することを要しない。
重要事実
強姦致傷罪の被告人に対し、原審は医師の診断書を証拠として採用し、被害者の傷害の部位及び程度に関する事実を認定した。被告人側は、診断書によって強姦の事実まで認定したかのような誤認がある、あるいは証拠の評価に誤りがあるとして上告した。また、被告人側から提出された示談書等の証拠について、原審が判決文の中で個別の判断を示していないことも不服とした。
あてはめ
1. 診断書の採用について:原判決は、診断書を単に傷害の部位及び程度の認定に用いたに過ぎず、強姦の事実は他の挙示証拠と総合して認定されている。したがって、証拠の評価と事実認定のプロセスに論理的な矛盾や違法は認められない。2. 示談書等の判断について:裁判所は、提出された証拠のすべてについて、判決文中で一々個別の評価や判断を明示する義務を負わない(旧刑訴法360条1項参照)。
結論
本件における証拠の採証及び事実認定の手続きに違法はなく、判決書における証拠判断の説示も十分である。したがって、被告人の上告を棄却する。
実務上の射程
証拠の総合評価の原則を確認するものであり、実務上、特定の証拠が犯罪事実の全要素を立証する必要がないことを示している。答案作成上は、証拠の証明力の評価や理由不備の論述において、「判決には個々の証拠に対する評価を逐一記載する必要はない」とする法理の根拠として引用可能である。
事件番号: 昭和37(あ)1056 / 裁判年月日: 昭和38年7月11日 / 結論: 棄却
有罪の言渡をするには、どの証拠で、どの事実を認めたかを明らかにする必要はあるけれども、必ずしも、各犯罪事実ごとに個別的にこれを認めた証拠の標目を示さなければならないものではなく、原判文と本件記録とを照し合せると、どの証拠でどの事実を認めたかが明らかであるから、原判決には所論のような違法は認められない(昭和二五年(あ)第…