一 原審公判調書に證據物につき適式な證據調がなされた旨記載されている以上、上告審において右證據調がなされなかつたと主張することはできない。 二 論旨は、被告人が、強姦を遂行しなかつたという新たな證據を發見したから「上告申立」をするというのであるが、その引用している法條を調べてみると、舊刑事訴訟法第四一三條、第四一四條は共に刑訴應急措置法第一三條第二項によつてその適用を排除されているからこれ等の法條に基く上告は適法の理由を缺くものであるのみならず被害者が公判外で所論のような陳述をしたからとて直ちに再審請求の事由あるものとは認め難い。
一 證據調手續の有無に關する公判調書の記載と異なる主張の可否 二 被告人が公判廷外において犯行否認の陳述をなしたことを理由とする上告及び再審請求の適否
舊刑訴法64條,舊刑訴法341條,舊刑訴法413條,舊刑訴法414條,刑訴應急措置法13條2項
判旨
証拠調べの範囲は事実審裁判所の裁量に委ねられており、公判期日における訴訟手続の適法性は公判調書の記載のみによって証明されるべきである。
問題の所在(論点)
事実審裁判所による証拠調べ申請の却下は裁量権の逸脱となるか。また、公判調書に証拠調べの実施が記載されている場合に、これと異なる手続上の瑕疵を主張できるか。
規範
証拠調べを行うか否かの裁定は、事実審裁判所の自由な裁量に委ねられる。また、公判期日における訴訟手続の履践については、公判調書の記載が絶対的な証明力を有し、これと異なる事実を主張して審理不尽等の違法をいうことはできない。
重要事実
被告人は強姦致傷の罪で起訴され、第一審および原審で有罪判決を受けた。弁護人は、犯行を否定する趣旨で特定の鑑定を申請したが却下された。また、証拠物である衣類(パンツ)が原審公判廷で実際に顕出されなかったと主張し、手続の違法を訴えたが、原審の公判調書には当該証拠について適式な証拠調べがなされた旨の記載があった。
あてはめ
まず、鑑定の申請却下について、裁判所が当該鑑定を本件審判に必要適切でないと判断して却下したことは、条理に反する違法な措置とは認められず、自由裁量の範囲内である。次に、証拠物の顕出の有無について、被告人側は実施されなかったと主張するが、公判調書には適式な証拠調べの記載がある。刑事訴訟法(旧法64条)上、公判手続は公判調書のみにより証明されるべきものであるため、調書の記載に反する事実を前提とした審理不尽の主張は採用できない。
結論
証拠調べの採否は原審の裁量であり、公判調書に記載がある以上、手続に違法はない。本件上告を棄却する。
実務上の射程
刑事訴訟法第52条(公判調書の証明力)および証拠決定の裁量権に関する基本判例である。答案上は、被告人による証拠調べ請求が却下された際の違法性判断や、公判手続の適法性が争点となる場面で、調書の絶対的証明力を示す根拠として活用できる。
事件番号: 昭和28(あ)1367 / 裁判年月日: 昭和28年7月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の自白のみに基づいて事実を認定することは憲法及び刑事訴訟法に反するが、第一審判決が自白以外の証拠も併せて事実を認定している場合には、自白のみによる認定とはいえず適法である。 第1 事案の概要:被告人が刑事裁判において有罪判決を受けた際、その事実認定が被告人の自白のみによってなされたとして、憲…