有罪の言渡をするには、どの証拠で、どの事実を認めたかを明らかにする必要はあるけれども、必ずしも、各犯罪事実ごとに個別的にこれを認めた証拠の標目を示さなければならないものではなく、原判文と本件記録とを照し合せると、どの証拠でどの事実を認めたかが明らかであるから、原判決には所論のような違法は認められない(昭和二五年(あ)第一〇六八号同年九月一九日第三小法廷判決、刑集四巻九号一六九五頁参照)。
数個の犯罪事実認定に関する証拠説示の方法。
刑訴法335条
判旨
有罪判決において証拠の標目を示す際は、必ずしも各犯罪事実ごとに個別的に対応させる必要はなく、判決文と記録を照らし合わせて事実認定の根拠が明らかであれば足りる。
問題の所在(論点)
有罪判決において「罪となるべき事実を認めた証拠」を挙示する際(刑訴法335条1項)、各犯罪事実と証拠を個別に一対一で対応させて明示する必要があるか。
規範
刑事訴訟法335条1項が定める「罪となるべき事実を認めた証拠」の挙示については、各犯罪事実ごとに個別的にこれを認めた証拠の標目を示さなければならないものではない。判決文の記載と記録を照らし合わせることで、どの証拠によってどの事実が認められたかが客観的に明らかであれば、同条の要求する証拠の挙示として法的に十分である。
重要事実
被告人Aおよびその他の被告人らに対し、第一審または控訴審において有罪判決が言い渡された。これに対し弁護人は、有罪の言い渡しをするにあたってどの証拠でどの事実を認めたかを明らかにする必要があるところ、原判決は各犯罪事実ごとに個別的な証拠の標目を示しておらず、訴訟手続に違法があるとして上告した。
あてはめ
本件において、原判決の文面と事件記録を照らし合わせると、裁判所がいかなる証拠に基づき、いかなる事実を認定したかが十分に判読可能である。したがって、各事実ごとに個別に証拠を列挙する形式を採っていなくとも、被告人の防御や上訴審による審査に支障を来すような不備があるとは認められない。
結論
原判決に証拠挙示上の違法は認められず、本件上告は棄却される。
実務上の射程
判決書の「証拠の標目」欄の記載方法に関する実務上の指針を示すものである。判例は、事実と証拠の個別的対応までを厳格に求めず、判決全体として認定の根拠が合理的に特定できれば足りるという緩やかな立場をとる。答案上は、判決書の理由不備(刑訴法378条4号)の成否を検討する際の解釈基準として活用できる。
事件番号: 昭和26(れ)1207 / 裁判年月日: 昭和26年9月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】強姦致傷の事実認定において、傷害の部位程度に関する事実を診断書に基づき認定し、強姦の事実を含む全事実に係る認定を他の証拠と総合して行っても、証拠の採否及び事実認定の論理に違法はない。また、提出された書証の一つ一つについて個別に判断を示す必要はない。 第1 事案の概要:強姦致傷罪の被告人に対し、原審…